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妊娠高血圧症候群の発症リスク、妊婦「受動喫煙あり」と関連-東北医薬大ほか

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2023年02月06日 AM10:42

妊娠中の喫煙は妊娠高血圧症候群発症と関連、受動喫煙は?

東北医科薬科大学は2月3日、受動喫煙にさらされている妊婦では妊娠高血圧症候群発症リスクが高くなることなどを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部衛生学・公衆衛生学教室の目時弘仁教授、東北大学病院産婦人科の田中宏典医員(当時)、東北大学大学院医学系研究科女性ヘルスケア医科学共同研究講座の岩間憲之講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Hypertension Research」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

妊娠中の喫煙は、死産、早産、低出生体重児の出生など、数多くのリスクをもたらすことが知られている。近年では、母児ともに危険な状態となり得る「」の発症にも関連することがエコチル調査から報告され、全国出生コホートコンソーシアムでも確認された。しかし、妊婦がさらされている受動喫煙が妊娠高血圧症候群のリスクとなるかどうかについては、これまで明らかにされていなかった。

エコチル調査参加の妊婦対象、「」有無で妊娠高血圧症候群発症の違いを分析

そこで、今回研究グループは、エコチル調査に参加している妊婦を対象に、受動喫煙の有無で妊娠高血圧症候群の発症に違いが観察されるかを分析した。エコチル調査は、環境省予算により実施されている長期にわたる出生コホート調査で、主に環境化学物質の曝露が子どもの健全な成長や発達にどのように関連しているか検討を行なうもの。その過程で妊娠中の合併症の有無も明らかにすることができる。妊娠中の受動喫煙状況は、質問票の回答をもとに、「めったにない」「1~3日/週」「4~7日/週」の3群に分類。これらの群について、妊娠高血圧症候群の有無を調べた。

妊娠高血圧症候群リスク、受動喫煙を週1~3日で1.18倍・週4~7日で1.27倍

研究の結果、受動喫煙がめったにない群に比較して、受動喫煙が週に1~3日、4~7日であった群で妊娠高血圧症候群になるリスクは、それぞれ1.18倍と1.27倍(95%信頼区間それぞれ1.02-1.36と0.96-1.67)と高くなっていた。この結果は、受動喫煙にさらされる時間で検討しても同様の結果だった。

受動喫煙が非喫煙妊婦全体に及ぼす影響3.80%、妊婦自身の喫煙による影響1.81%より「大」

次に、受動喫煙の曝露が妊婦集団における妊娠高血圧症候群リスクに及ぼす影響を調べるために、集団寄与危険割合を算出。集団寄与危険割合とは、曝露要因を取り除けば集団全体でどれだけの罹患者を減少させることができるかを示すため、予防医学において重要な指標だ。その結果、受動喫煙が週に1~3日、4~7日であった群で、受動喫煙が非喫煙の妊婦全体に及ぼす影響(集団寄与危険割合)は、曝露がまれな群を基準としてそれぞれ1.08%および2.72%だった。したがって受動喫煙が非喫煙妊婦全体に及ぼす影響は全部で3.80%となった。

さらに、喫煙者を含む全参加者について、喫煙の有無で調整して同様の解析を実施。受動喫煙暴露の集団寄与危険割合は3.53%と、先ほどの結果とほぼ同様の結果だった。一方、同じ集団で妊婦自身の周産期の喫煙による集団寄与危険割合は1.81%となった。

受動喫煙の影響範囲は大きく、対策が重要

今回の研究により、妊婦全体に及ぼす受動喫煙の影響は、妊娠高血圧症候群全体の3.80%となり、妊婦自身の喫煙が及ぼす影響の1.81%と比較しても大きいことが明らかになった。研究グループは、妊婦の集団における妊娠高血圧症候群の予防を考えると、妊婦自身の喫煙対策に加え、妊娠の可能性がある女性が周囲にいる場合の受動喫煙対策を行なうことが重要で、影響範囲が大きいことが明らかとなったと述べている。

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