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第5のがん治療としても期待される光治療、体の隅々を照らすデバイスを開発-名大ほか

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2022年10月07日 AM11:32

近赤外光線免疫療法などの光治療、光照射デバイス開発の遅れが課題

名古屋大学は10月6日、心筋梗塞や脳梗塞の治療などに幅広く用いられている血管内治療技術(IVR:インターベンショナルラジオロジー)を応用した光照射技術の開発を行い、現状では光が届かない深部組織への新規光照射システムおよびデバイス(:Endovascular Therapy-Based Light Illumination Technology)の開発に成功したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科最先端イメージング分析センター/B3ユニットフロンティア長・高等研究院の佐藤和秀特任講師と朝日インテック株式会社の塚本俊彦元研究員、下神学主席研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「EBioMedicine」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

光を用いた治療技術は数多く研究されており、その一部は実用化されている。近年では、2011年に報告された近赤外光線免疫療法が新しいがん治療法として注目されている。この治療法では、がん細胞が発現するタンパク質を特異的に認識する抗体と光感受物質IR700の複合体を合成し、その複合体が細胞表面の標的タンパク質に結合している状態で690nm付近の近赤外光を照射すると細胞を破壊する。研究グループは、2018年に、これらの細胞死機序は、光化学反応をもとにした新概念の細胞死であることを明らかにした。この治療法は、これまでと異なる方法でがん細胞を標的破壊できることから、手術・放射線・化学療法・がん免疫療法につづく、「第5のがん治療」として期待されており、世界に先駆けて日本でEGFRを高発現する再発既治療頭頸部がんに対して承認を受けて保険適用されている。

このように、光を用いることで、薬剤のみの治療では不十分だった治療効果や治療選択性、安全性の向上が可能となるため、近赤外光線免疫療法を始めとしてさまざまな光治療技術が研究されている。しかし現在のところ、光照射デバイスの開発面が遅れており、光照射可能な部位が体表などの一部に限定されることなどが原因で、臨床応用が十分に進んでいない。そこで今回、血管内治療技術を応用することで臨床にすぐに使用できるようにと企図し、体中に張り巡らされた血管の中を通して光を到達できる光照射デバイスとシステムの開発を行った。

血管内治療の技術を使ったデバイスを開発、動物実験で血管外組織への照射光の到達を確認

研究グループは、心筋梗塞や脳梗塞治療などの血管内治療で用いられるIVR技術を応用して、デバイスに光照射技術を組み合わせることで、血管内で使用可能な細径光照射デバイス「ET-BLIT」の開発に成功した。

ET-BLITは、ヒトの全身に張り巡らされた血管を経由して患部(特に体外からの光照射では全く届かないような組織)に対し、安全で、効率よく光を届けるための治療システム。今回開発された光照射デバイスは、通常の血管内治療と同様の手法で容易に患部までの到達が可能であることが確認された。加えて、搭載する光照射位置の正確な制御技術やリアルタイムでの血液温度測定技術を組み合わせることで、血管の中から血管外の目的組織に対して、高効率かつ高い安全性で近赤外光を照射可能であることも確認された。

この評価では、ヒトに近い血管走行を持つブタを用いた動物実験を行い、肝臓、腎臓などの血管に鼠径部からのアプローチで容易にデバイスが到達可能であることを確認、かつ評価を行ったいずれの血管においても血管外における光の検出に成功した。

がん治療に加え、さまざまな光治療技術への応用に期待

心筋梗塞や脳梗塞治療のための血管内治療は現在世界中で幅広く行われている治療術式・技術であるため、今回開発されたET-BLITを臨床応用に移行するハードルは、ソフト、ハードの両面からも低いと考えられる。このため、今後の展開として、ET-BLITのデバイスのさらなる最適化を進めるとともに、臨床試験への移行に向けた基礎検討、非臨床試験を実施することで、近赤外光線免疫療法を始めとして、数多くの光治療の臨床応用移行のための技術として応用されることが期待される。「次世代の光治療をデバイス面から支える技術開発を今後も展開し、患者さんへの貢献をしていきたいと考えている」と、研究グループは述べている。

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