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神経変性疾患CANVAS、原因遺伝子の異常リピートに3パターンを発見-横浜市大ほか

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2022年04月07日 AM10:30

RFC1遺伝子のリピート異常伸長、シーケンス情報の全容は不明だった

横浜市立大学は3月31日、ロングリードシーケンサーを用いた解析により、小脳性運動失調、ニューロパチー、前庭機能障害を主徴とするCerebellar ataxia, neuropathy, vestibular areflexia syndrome()の16名の患者において、RFC1遺伝子のイントロン領域に存在する両アレル性リピート異常伸長領域の全配列を決定し、異常リピート伸長のリピートユニット配列の組み合わせに3つのバリエーションがあることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大附属病院遺伝子診療科の宮武聡子講師、同大学院医学研究科遺伝学の松本直通教授らの研究グループが、、東埼玉国立病院との共同研究として行ったもの。研究成果は、「Brain」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

小脳性運動失調・ニューロパチー・前庭反射消失症候群(CANVAS)は遅発性で緩徐進行性の神経変性疾患。正常なヒトにはRFC1遺伝子のイントロン領域に、AAAAGという配列のリピートが通常11個連なって存在するが、CANVASの患者では、このリピートの配列の中身が両アレル性にAAAAGからAAGGGに変化し、それが異常に伸長していることが原因であることが2019年に報告された。またリピートの配列の中身がACAGGと変化した両アレル性のリピート異常伸長も疾患の原因となりうることが示唆されていたが、そのシーケンス(塩基配列)情報の全容(完全シーケンス)は不明だった。

AAGGGのホモ、ACAGGのホモ、AAGGGとACAGGの複合ヘテロの3通り存在

今回、研究グループは、成人以降に発症した小脳性運動失調患者212家系216名を対象に、ロングリードシーケンサーを含む統合的な解析を実施。その結果、これまでCANVASの患者で報告されている2種類のリピート配列をホモ接合性、もしくは複合ヘテロ接合性に有する患者を同定し遺伝学的にCANVASと診断した。この中には、ACAGGリピート伸長をホモ接合性に有する3家系7例、AAGGGリピート伸長をホモ接合性に有する7家系7例、ACAGGとAAGGGリピートの複合ヘテロ接合性伸長を有する2家系2例が含まれ、これらの患者におけるリピート伸長領域の完全シーケンスを決定した。

異常リピート伸長配列の違いにより、臨床症状に異なる特徴が存在

また、今回リピートを解析したCANVASのうち、ACAGGリピートを持つ患者は、運動神経の障害がより顕著で、ACAGG/AAGGGリピート伸長を複合ヘテロ接合性で持つ患者は、発症年齢が遅く、進行が緩やかな傾向があった。

リピート伸長が原因となっている疾患として、今回の研究の対象となったCANVASをはじめ、今のところ神経筋疾患を中心に40種類程度知られている。リピート配列は解析が難しいゲノム領域であるため、どのような配列の変化/伸長によりどのような病態が引き起こされるかについて、わかっていないことも多く、未知のリピート病も多いと考えられる。

今回の研究で、異なるリピート異常伸長配列やその組み合わせが同一疾患を引き起こすことがわかり、リピート病の疾患発症メカニズムに新たな視点が提供された。また、リピート伸長領域の完全シーケンスが可能であることを示した同研究は、未知のリピート病の発見など、今後の新しい研究展開の可能性を示唆する。研究グループは、リピート配列のバリエーションと臨床症状の関連について、今後研究を続けて明らかにしていきたい考えを示している。

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