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老化細胞除去ワクチンの開発に成功、加齢関連疾患へ治療応用の可能性-順大ほか

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2021年12月15日 AM10:45

病的な老化細胞を副作用なしに選択的に除去する治療法はまだない

順天堂大学は12月10日、加齢関連疾患への治療応用を可能にする老化細胞除去ワクチンの開発に成功したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科循環器内科学の南野徹教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Aging」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

加齢や肥満などの代謝ストレスによって、生活習慣病やアルツハイマー病などの加齢関連疾患が発症・進展することが知られているが、その仕組みはよくわかっていない。研究グループではこれまで20年以上にわたって加齢関連疾患の発症メカニズムについて研究を進め、加齢やストレスによって組織に老化細胞が蓄積し、それによって惹起される慢性炎症が、加齢関連疾患の発症・進展に関わっていることを明らかにしてきた。さらに最近、蓄積した老化細胞を除去()することで、加齢関連疾患における病的な老化形質を改善しうることが示されている。しかしながら、これまで報告されている老化細胞除去薬は、抗がん剤として使用されているものが多く、副作用の懸念があった。そこで研究グループは、より老化細胞に選択的に作用し、副作用の少ない治療法の開発を目指して研究を行った。

老化血管内皮細胞特異的に発現する老化抗原GPNMBを同定

まず、老化細胞に特異的に発現している老化抗原を同定するために、老化したヒト血管内皮細胞の遺伝子情報を網羅的に解析。得られた候補のうち、すでにヒトの老化と関連があることが示唆されているGPNMBという老化抗原について解析を進めた。その結果、GPNMBはヒト老化血管内皮細胞において著明に増加するだけでなく、動脈硬化モデルマウスや高齢マウスの血管や内臓脂肪組織においてもその発現の増加が認められた。また、動脈硬化疾患のある高齢患者の血管においてもその発現が増加していることがわかった。

次に、GPNMBを標的とした抗老化治療の可能性を検証するため、GPNMB陽性の老化細胞を薬剤によって選択的に除去できる遺伝子改変モデルマウスを作製。そのマウスに肥満食を与えたうえで、薬剤によりGPNMB陽性老化細胞の選択的除去を行ったところ、肥満に伴う糖代謝異常や動脈硬化の改善が認められた。

老化細胞除去ワクチンの開発にマウスで成功、種々の病的老化形質が改善

そこで、GPNMBを標的とした老化細胞除去ワクチンの開発に取り組んだ。いくつかデザインしたワクチンの中で、接種にてGPNMBに対する抗体価が有意に増加するものを選別。このワクチンを、肥満食を与えた状態のマウスに接種したところ、肥満に伴って内臓脂肪に蓄積した老化細胞が除去され、脂肪組織における慢性炎症が改善することで、糖代謝異常の改善が得られることがわかった。また、動脈硬化モデルマウスでは動脈硬化巣において多くの老化細胞の蓄積が見られたが、老化細胞除去ワクチンによって老化細胞は除去され、慢性炎症の改善とともに動脈硬化巣を縮小させうることがわかった。

さらに、高齢マウスにおけるワクチン接種後のフレイルの状態を観察したところ、ワクチン接種していないマウスと比較してフレイルの進行が抑制されていた。早老症モデルマウスに対するワクチン接種では、寿命の延長効果が確認された。

最後に、これまでの老化細胞除去薬との比較実験では、老化細胞除去ワクチンの副作用が少ないことや効果の持続時間が長いことなども確認できた。以上の結果から、GPNMBなどの老化抗原を標的とした老化細胞除去ワクチンは、加齢関連疾患に対する新しい治療方法となる可能性が示唆された。

アルツハイマー病を含めた様々な加齢関連疾患の治療への応用に期待

今回、研究グループは、加齢関連疾患に対する新しい治療法の確立に向けた老化細胞除去ワクチン開発に成功した。GPNMBは老化した血管内皮細胞や単球に豊富に発現している老化抗原だが、他種の老化細胞では別の老化抗原が存在することが予想される。今後は、各々の患者や疾患によって蓄積している老化細胞の異なる老化抗原を標的とすることで、個別化抗老化医療の実現が可能になると研究グループは考えている。また、「今回の研究では、糖尿病や動脈硬化、フレイルに対する改善効果や早老症に対する寿命延長効果を確認できたことで、今後はアルツハイマー病を含めた様々な加齢関連疾患での検証や、ヒトへの臨床応用が期待される」との見解を述べている。

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