ククイナッツオイル、東南アジアで伝統的にヘアケアなどを目的に使用
大阪大学は7月3日、ククイナッツオイルがまつ毛を長くする効果があることを確認し、またその成長メカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院薬学研究科先端化粧品科学(マンダム)共同研究講座の藤田郁尚招へい教授、加藤寛子特任准教授(常勤)、アイルランガ大学(インドネシア)Department of Pharmaceutical Sciences, Faculty of PharmacyのNoorma Rosita Badjuri教授、Tristiana Erawati教授らと株式会社マンダムの研究グループによるもの。研究成果は、「The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists(IFSCC)2025」で2025年9月に発表予定。

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まつ毛は、保護機能と美的機能の両方を果たしている。特に女性にとって、長くて豊かなまつ毛は憧れる人も多く、健康的なまつ毛を保つことは、目を保護するためにも、目元の印象を向上させるためにも重要である。また、年齢や皮膚疾患、薬の副作用などが原因でまつ毛貧毛症に悩む生活者も一定数存在する。
ククイナッツオイルは、インドネシアをはじめとする東南アジア地域で、伝統的にスキンケアやヘアケアを目的に使用されてきた。特に、髪の保湿や艶出し、髪の成長促進に利用されることが多く、これがジャムウの一部として取り入れられている。また、ククイナッツオイルは抗炎症作用があることから、湿疹や皮膚トラブルの治療にも使われてきた。しかし、ククイナッツオイルの育毛に関する詳細なメカニズムについては不明な点も多く、まつ毛に対する育毛効果も明らかになっていなかった。
日本人女性15人対象、ククイナッツオイル配合サンプルをまつ毛に塗布・伸長度合いを確認
今回、研究グループは、日本人女性15人を対象にククイナッツオイルを配合したサンプルをまつ毛に塗布し、まつ毛の伸長度合いを確認した。
ククイナッツオイル配合群でまつ毛が明らかに長くなる、色素沈着なし
その結果、ククイナッツオイルを配合したサンプルを使った場合、配合していないサンプルと比べて、まつ毛が明らかに長くなることがわかった。また今回の試験では、目の周りの色素沈着は見られなかった。
ククイナッツオイルがAKR1Cファミリーメンバー酵素群の働きを高め、PGF2α産生増を示唆
次に、ヒトの毛包や表皮の細胞を用いてククイナッツオイルによる育毛メカニズムの解明を試みた。ヒトの皮膚から取り出した毛包にククイナッツオイルを添加すると、毛髪は伸長し、その度合いは緑内障の治療薬として使用され、まつ毛の成長を促進する効果が知られているビマトプロストと同程度の育毛効果であることがわかった。また、ククイナッツオイルによって毛髪の成長を助ける因子であるプロスタグランジンF2α(PGF2α)の産生に関与するAKR1Cファミリーメンバー酵素群の発現増加が確認された。さらに、PGF2αの産生も増加することがわかった。これは、ククイナッツオイルがAKR1Cファミリーメンバー酵素群の働きを高め、PGF2αの産生を増やしていることを示唆している。
まつ毛貧毛症や脱毛症への治療提案に期待
まつ毛の育毛は、異物から目を保護する物理的な機能を向上させるだけでなく、自己肯定感や精神的な満足度を高めるなどの日常生活における心理的な安定や幸福感の向上など、生活者のQOL向上に寄与する重要なものと考えられる。同研究成果をもとに、育毛に関するさらなるメカニズムが明らかになれば、まつ毛貧毛症や脱毛症への新たな治療の提案につながることが期待される、と研究グループは述べている。
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・大阪大学 ResOU


