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コロナ禍における発達障害児のQOL低下に睡眠スケジュールの悪化が関連-NCNPほか

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2021年10月27日 PM12:00

発達障害児の睡眠スケジュールの変化と心理状態の変化を、子ども自身の評価で検討

)は10月26日、新型コロナウイルス感染症の流行拡大下において、発達障害がある子どもの生活の質(QOL)について検討し、特に睡眠スケジュールの悪化が抑うつ傾向と深く関わっていることを明らかにしたと発表した。この研究は、同センター精神保健研究所知的・発達障害研究部の上田理誉研究生、岡田俊部長らの研究グループと、日本心身障害児協会島田療育センターはちおうじの小沢浩所長らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Psychiatry」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

同センターの知的・発達障害研究部では、新型コロナウイルス感染症感染拡大初期より、発達障害の子どもとその親のメンタルヘルス悪化を懸念し、注目しており、上田理誉研究生らは、新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言下に実施した、発達障害の学齢期の子どもの親による親と子どものQOL調査で、子どもの睡眠スケジュールの変化が、子どもと親のQOL低下と関連していることを2021年2月に報告している。しかし過去の研究で、親の代理評価は、しばしば子どもの自己評価の結果と乖離することが問題点として指摘されていた。

そこで研究グループは今回、子ども自身の自己評価により、子どものQOLが睡眠スケジュールの変化でどのような影響を受けたのか、また、睡眠パターンが変化した子どもと変化しなかった子どものQOLの低下を予測する心理状態について検討した。

睡眠スケジュールが変化した子どものQOL低下は、抑うつ状態の増悪で予測可能と判明

研究では、新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言下の2020年5月に、8~17歳までの学齢期の発達障害の子ども86人(平均年齢11.7歳、男子70人、女子16人、平均知能指数83.6)が参加。子どもたちは、現在のQOL、、不安について質問紙による自己評価を行った。また、現在の一時的な気分を表すVAS(Visual Analog Scale)について、0(今まで感じた中で最悪)-100(今まで感じた中で最高)の数値を用いて回答した。一方、両親は、現在の子どもたちの不適応行動や睡眠パターンの変化に関するアンケートに回答した。

まず、睡眠の変化がQOL、現在の一時的な気分、不適応行動に影響を与えているか否かについて統計学的に検討した。また、睡眠スケジュールが変化した群と変化しなかった群のQOL低下に有意に影響する心因的要因を特定した。

その結果、参加者の46.5%に睡眠スケジュールの変化(入眠時間、起床時間の遅れ)が認められた。これらの変化はQOLの低下だけでなく、内在化症状(抑うつや不安)とも関連していたという。また、睡眠スケジュールが変化した子どものQOL低下は、抑うつ状態の増悪によって予測されやすいことがわかった。さらに、睡眠パターンが変化しなかった子どものQOLの低下は、抑うつ状態の悪化だけでなく、VASで評価される現在の一時的な気分の悪化でも予測されやすいことが明らかになった。

子どもだけでなく、親のメンタルヘルスの変化にもフォローアップが必要

睡眠スケジュールの悪化した子どものQOL低下には、抑うつ傾向の悪化のみが深く関わっていた。一方、生活スケジュールが安定している子どものQOLは現在の一時的な気分にも影響されているため、QOLを維持するためには充実した生活を送る必要がある。また、学齢期の子どもの支援者は、子どもの睡眠スケジュールと抑うつ傾向の関係について理解し、対応していく必要があると考えられる。

新型コロナウイルス感染症は変異株の出現により長期化し、発達障害の子どもたちと、その親のメンタルヘルスの状況も変化している。研究グループはこの変化についてもフォローアップし、社会に還元していきたいと考え、2021年5月にも再調査を行い、現在、結果を取りまとめているという。

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