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ベッド安静中の筋力トレーニングによる骨格筋と筋内脂肪の量的変化は相関-名大ほか

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2020年10月16日 AM11:30

ベッドレストが筋内脂肪や皮下脂肪へ与える影響は?

名古屋大学は10月15日、ベッド安静中に行った筋力トレーニングにより、骨格筋量が維持され、筋内へ霜降り状に蓄積する脂肪(以下、)が減少することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大総合保健体育科学センターの秋間広教授、同大学院教育発達科学研究科の小川(矢部)まどか大学院生(当時、現日本体育大学助教)らの研究グループが、独シャリテー・ベルリン医科大学のダニエル L ベラヴィ研究員(現オーストラリア・ディーキン大学准教授)らと共同で行ったもの。研究成果は、「Physiological Report」電子版に掲載されている。


画像はリリースより

身体活動の減少がヒトの身体へ及ぼす影響は、健常者を対象に活動量を著しく減少させる「ベッドレスト」実験によって調べられている。ベッドレストは、寝たきりや宇宙滞在で生じる身体適応をシミュレーションするモデルである。ベッドレストにより骨格筋量は大幅に減少すること、また、ベッドレスト期間中に筋力トレーニングを行うと筋萎縮が抑制されることも知られている。一方で、ベッドレストのみあるいはベッドレストとその期間中に行う筋力トレーニングが、筋内脂肪や皮下脂肪へ与える影響は十分明らかになっていなかった。

近年、皮下脂肪と内臓脂肪に加え、第三の脂肪と呼ばれる「」が注目されている。異所性脂肪とは、本来、脂肪が蓄積しない臓器や部位(膵臓、筋肉、肝臓など)に蓄積する脂肪のことを示す。筋内に蓄積する脂肪は「筋内脂肪」と呼ばれ、2型糖尿病の原因となるインスリン抵抗性を引き起こす可能性や、筋機能に悪影響をもたらす可能性が示されている。この筋内脂肪は、加齢や肥満によって増えることが知られており、先行研究では身体活動の減少によっても筋内脂肪の増加が引き起こされることが示されている。そこで研究グループは、健康な若齢者を対象に8週間のベッドレストとその期間中の筋力トレーニングが太ももの骨格筋量と脂肪量へ与える影響について検討した。

筋力トレーニングで骨格筋量が増加している人ほど筋内脂肪量が減少

健康な若齢男性20人を対象に実験を行った。対象者は、8週間のベッドレストのみを行うコントロール群と、その期間のベッドレストに加えて筋力トレーニングを行う筋トレ群へランダムに分けられた。筋トレ群は、ベッドレスト期間中に週3回のレジスタンス運動(スクワット、ヒールレイズ、トゥレイズ等)を実施。ベッドレストの前後には磁気共鳴画像法で太ももの連続横断画像を撮影し、骨格筋量と筋内脂肪量、皮下脂肪量を評価した。なお、ベッドレスト期間中は両群とも規定食を摂取した。

ベッドレスト後の評価では、骨格筋量は、コントロール群で大幅に減少した一方、筋トレ群で維持されていた。筋内脂肪量は両群で減少。また、皮下脂肪量は、コントロール群で増加したが、筋トレ群ではその変化が観察されなかった。興味深いことに、同じ脂肪に属する筋内脂肪と皮下脂肪の量的な変化には関連がみられなかったが、筋トレ群の骨格筋と筋内脂肪の量的な変化には反比例関係がみられた。この結果は、筋力トレーニングで骨格筋量が増加している人ほど筋内脂肪量が減少していたことを示している。

高齢者の健康維持や増進方法の確立に期待

今回の研究結果から、身体活動の減少や筋力トレーニングによる脂肪の適応が蓄積部位によって異なり、骨格筋と筋内脂肪の量的な変化に相互関係がみられることが明らかになった。これまで身体活動の減少によって骨格筋量の減少が生じることはよく知られていたが、それと同時に筋内脂肪量も減少し、皮下脂肪量の増加が生じることが明らかとなった。これは加齢においても同様な変化が認められることが多くの研究で示されており、将来的に糖尿病や生活習慣病に罹患するリスクが高まる可能性がある。

また、ベッドレスト期間中の筋力トレーニングによって、骨格筋量や皮下脂肪量が維持され、筋内脂肪量は減少することが示された。これらの研究成果は、身体活動の減少や筋力トレーニングによって筋肉の量的な変化だけでなく、質的な変化が生じることが考えられる。「研究成果は、健康増進やそれを目的とした効果的な運動処方の確立へ役立つことが期待される」と、研究グループは述べている。

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