医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 筋痛性脳脊髄炎の自律神経受容体抗体に関連した脳内構造ネットワーク異常を発見-NCNPほか

筋痛性脳脊髄炎の自律神経受容体抗体に関連した脳内構造ネットワーク異常を発見-NCNPほか

読了時間:約 3分27秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年07月08日 PM12:00

原因不明で症状が多様、診断がつかないケースも多い

(NCNP)は7月3日、筋痛性脳脊髄炎/(以下、/)の自律神経受容体に対する自己抗体に関連した脳内構造ネットワーク異常を明らかにしたと発表した。これは、同センター病院放射線診療部の佐藤典子部長、神経研究所免疫研究部の山村隆特任研究部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Neuroimaging」に掲載されている。


画像はリリースより

ME/CFSは、半年以上にわたって強い疲労感が続き、全身の脱力などにより日常生活を送るのが困難になる原因不明の病気。労作後の消耗や、過眠や不眠、熟眠感がない、認知機能障害(記憶障害、集中力低下、脳にもやがかかったような状態)を呈する。また、起立不耐、刺激過敏症や化学物質過敏症、頭痛、関節痛、筋肉痛のために生活の質が極端に低下することもある。さらに、原因不明の発熱や、腹痛・下痢、体温調節が困難になるといった症状も比較的多くの患者でみられる。発熱、咽頭痛、下痢など風邪でみられる症状の後に発症することが多いことから、さまざまなウイルスが引き起こす疾患であることが共通認識になっている。一方、脳画像研究によって脳内炎症が認められるという報告や、免疫系の異常を示す論文、免疫療法の有効性を示す医師主導治験の結果など、新しい知見が報告されている。

ME/CFSの診断は、先に記載したような症状があることと、除外診断によって行われるが、診断がなかなかつかないケースが多いのが実情。患者によって症状の組み合わせが異なること、病院で受ける血液検査や脳画像検査では異常が出ないこと、などがその理由だ。また、原因や病態に基づいた根治療法はなく、活動量の調整(適切な休憩)や対症療法が試みられているのが現状で、この病気に対して保険適応が認められた治療法・薬剤はまだない。

先行研究のMRI画像解析で脳右上縦束の異常を検出

研究グループでは、(AMED)の研究班「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群に対する診療・研究ネットワークの構築(研究代表者:山村隆)」において、ME/CFS診療を行っている内科医との連携を構築し、神経研究所免疫研究部と病院放射線診療部が連携して免疫学的解析・脳画像解析を進めている。先行研究において、MRIの最新の拡散イメージング手法である拡散尖度画像(Diffusional Kurtosis Imaging:DKI)、拡散イメージングの新たな画像処理手法である神経突起イメージング(Neurite Orientation Dispersionand Density Imaging:NODDI)を用いて右上縦束の異常を検出し、ME/CFSの症状である脳内処理作業やワーキングメモリの機能低下の原因である可能性を示している。そこで、研究グループは、ME/CFS患者の脳内構造ネットワーク異常と抗自律神経受容体受容体抗体価との相関を調べ、抗自律神経受容体受容体抗体がME/CFS患者の脳にどのような影響を与えているのかを調べた。

抗β1/抗β2アドレナリン受容体抗体が脳内異常と関連

調査は、2015年10月~2019年10月までの間にNCNP病院を受診し、ME/CFSの国際的な診断基準を満たし、3テスラMRI撮像と自律神経受容体に対する自己抗体測定を実施した89人(男性13人、女性76人;平均年齢37.3歳、右利き手)を対象とした。測定した血清抗体は、抗β1アドレナリン受容体抗体、抗β2アドレナリン受容体抗体、抗M3アセチルコリン受容体抗体、抗M4アセチルコリン受容体抗体で、血液採取とMRI撮像は30日以内に実施。ネットワーク解析では、局所脳のネットワーク指標である次数、クラスタリング係数、媒介中心性、特徴的経路長とともに、全体脳のネットワーク指標であるスモールワールド性を解析した。その結果、抗β1アドレナリン受容体自己抗体価と右背外側前頭前野の媒介中心性との間に正の相関、抗β2アドレナリン受容体自己抗体価と右中心前回の特徴的経路長との間に負の相関を認めた。

背外側前頭前野は、注意力やワーキングメモリに関与する他、痛みの調整も担っている。つまり、抗β1アドレナリン受容体自己抗体は右背外側前頭前野に微小な構造変化を引き起こし、注意力やワーキングメモリの低下、痛みの調整の異常をきたしている可能がある。背外側前頭前野は、上縦束が投射する部位であり、先行研究で示された右上縦束の異常に密接に関連していると考えられた。

また、中心前回は運動を司る部位として有名だが、慢性疼痛患者では中心前回が活性化し、前頭前野、中心後回、視床を介して痛みの調整を行っていると考えられている。特徴的経路長の減少は、持続的な痛みによる中心前回の活性化を反映していると考えられ、その原因として抗β2アドレナリン受容体自己抗体の存在が考えられた。

今回の研究から、抗β1および抗β2アドレナリン受容体抗体が、ME/CFS患者の痛みを始めとするさまざまな症状を説明しうる脳内の特定の部位の異常と結びついていることが明らかとなった。一方で、自己抗体が脳内異常を引き起こすメカニズムについては今後の検討が必要だ。研究グループは、「ME/CFSにおいて右上縦束の重要性がさらに確実になったことで、将来、脳画像解析がME/CFSの診断に活用されることが期待される。また、この自己抗体が新たな血液診断バイオマーカーの一つとなる可能性もある。この自己抗体を除去する、あるいは産生を減少させる治療法が、抗体価の高い患者に有効な可能性も考えられる」と、述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • パーキンソン病の原因「αシヌクレイン」のアミロイド線維形成過程を一部解明-金沢大ほか
  • モガムリズマブ抵抗性のATLリンパ節病変にブロモドメイン阻害剤が有用な可能性-名大
  • 40歳以上の夫婦は同じ生活習慣病にかかりやすいと判明-筑波大
  • 高齢者における社会からの離脱には段階があることが明らかに-都長寿研
  • 日本人の関節リウマチ合併の間質性肺炎に関わる遺伝子領域をGWASで同定-阪大ほか