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がんやダウン症につながるゲノム不安定性に関連の新しい分子メカニズムを発見-阪大

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2019年11月07日 AM10:45

細胞分裂時、キネトコア形成のためCENP-Cが染色体と結合する仕組みを研究

大阪大学は11月5日、染色体が細胞に伝達される際に重要な働きを担うキネトコア()の形成に必要なCENPCというタンパク質と染色体との結合メカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院生命機能研究科大学院生の渡邉励人氏(博士後期課程)、原昌稔助教、深川竜郎教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国科学誌「Journal of Cell Biology」に公開されている。


画像はリリースより

染色体の伝達の過程では、(動原体)と呼ばれる巨大タンパク質複合体が、染色体上のセントロメア領域に形成される。そのキネトコアに紡錘体という分裂装置が結合し、染色体は次世代の細胞への均等な分配に至る。そのため、この過程にはキネトコアの形成が必須だ。これまでキネトコアの形成には、CENP-Cと呼ばれるタンパク質が染色体と結合することが重要と考えられていたが、どのようなメカニズムでCENP-Cが染色体と結合するのかは不明だった。

CENP-Cのリン酸化が染色体との結合に重要

研究グループは、CENP-Cとセントロメアの結合が、細胞分裂する時期に特異的に起こることに着目。CENP-Cは細胞分裂期にリン酸化修飾を受けるため、CENP-Cのセントロメア結合領域付近でリン酸化を受けている領域を探索した結果、セントロメア結合領域にリン酸化を受ける配列を発見。その配列がリン酸化を受けないよう、変異を入れたCENP-Cでは、セントロメアに局在しないことがわかった。

リン酸化が結合に重要であることを確かめるために、試験管内でセントロメア領域を再構成し、リン酸化したCENP-Cとリン酸化されていないCENP-Cとの結合実験を実施。その結果、リン酸化により結合が促進することを確認した。

最後に、ヒトやニワトリ細胞でこのリン酸化の意義を確認し、CENP-Cのリン酸化が、セントロメアとの結合を介してCENP-Cの機能に重要であることが証明された。

がんやダウン症など、染色体の伝達異常が原因となる疾患の解明には、染色体の正確な伝達メカニズムを理解することが不可欠だ。今回、CENP-Cのリン酸化という新しいターゲットが発見されたことは、今後の薬剤開発に向けても重要な知見と考えられる。研究グループは、「今回の成果は、直接の薬剤開発研究ではないが、本知見を活用して、将来的には新しい抗がん剤の開発が期待される」と、述べている。

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