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パーキンソン病の発症・進行を抑制する新規核酸医薬を開発-阪大ら

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2019年05月23日 PM12:30

神経細胞にαシヌクレインタンパク質が蓄積することで発症

大阪大学は5月21日、遺伝性パーキンソン病の原因であるαシヌクレインタンパク質の蓄積を抑制する核酸医薬を新たに開発し、パーキンソン病の症状を改善することを動物モデルにおいて証明したと発表した。この研究は、同大学院医学系研究科の望月秀樹教授(神経内科学)らの研究グループが、同大学院薬学研究科創薬センター、東京医科歯科大学脳神経病態学らのグループと共同で行ったもの。研究成果は英国科学雑誌「Scientific Reports」に、日本時間で同日公開された。


画像はリリースより

パーキンソン病は世界で約1千万人の人々が罹患している神経疾患。パーキンソン病に対して、ドパミン製剤など症状を改善する治療薬は存在するが、進行を抑制する根本的な治療法は存在しない。そのため、寝たきりの原因となるなど、大きな社会問題になっており、根治療法の開発が待たれている。

同疾患は、神経細胞にαシヌクレインタンパク質が蓄積することで発症すると考えられている。そこで今回、研究グループは、遺伝性パーキンソン病の原因であるαシヌクレインをターゲットとする核酸医薬を開発してαシヌクレインタンパク質の蓄積を抑制することを目的とし、研究を行った。

αシヌクレインの蓄積を抑制、行動障害を改善

研究グループはまず、αシヌクレインタンパク質の蓄積を抑制するため、αシヌクレインのタンパク質合成を阻害する核酸医薬を開発した。通常、核酸は細胞外では速やかに分解されてしまうが、今回、核酸を人工的に修飾することで、生体内での安定性を獲得することに成功した。

次に、開発した核酸医薬の有効性を、パーキンソン病モデルマウスを用いて調べたところ、αシヌクレインの蓄積を抑制し、本来パーキンソン病モデルマウスに見られる行動障害を改善することが確認できた。

これらの研究成果は、臨床での投与法に近い方法で効果を発揮することから、これまで根治療法が存在しなかった、遺伝性パーキンソン病や孤発性パーキンソン病の有効な治療法として期待される。また、パーキンソン病だけでなく、「異常シヌクレインの蓄積によって生じることが知られている、レヴィー小体型認知症や多系統萎縮症認知症などの神経疾患への応用も期待される」と、研究グループは述べている。

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