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スピンラザ、全ての型の脊髄性筋萎縮症治療への使用が可能に-バイオジェンがセミナー開催

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2017年10月12日 PM03:00

国内の推定有病率10万人当たり0.5~1.0人の難病

・ジャパン株式会社は10月6日、脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬「(R)髄注12mg」(一般名:ヌシネルセンナトリウム)についてメディアセミナーを開催した。

SMAは、国内での推定有病率が10万人当たり0.5~1.0人と報告されており、小児慢性特定疾病に認定されている。発症年齢などによってI~IV型に分類され、筋緊張低下や筋力低下、筋萎縮が一般的な臨床症状。ほぼ全てのSMA症例は、染色体5q領域でのSurvival Motor Neuron 1(1)遺伝子の欠失または突然変異によるSMNタンパク質の欠乏およびそれに付随する脊髄全角での運動ニューロンの変性に起因する。一方、1遺伝子の近傍に位置し、少量のSMNタンパク質産生を担うSMN2遺伝子がある。2遺伝子は、1遺伝子と相同で、2遺伝子のコピー数が、SMAの臨床表現型の最も重要な予測因子として知られている。発症時期が早く、SMNタンパク質の算出が少ないほど、疾患は重度だ。

スピンラザは、国内で初めて承認されたアンチセンス核酸医薬品。SMN2遺伝子のmRNAスプライシングパターンを修正することで、SMN2遺伝子から算出される完全長タンパク質の量を増加させ、SMA患者の運動機能の改善や呼吸障害などによる死亡リスクを軽減するという。同剤は、遺伝子検査により、SMN1遺伝子欠失または変異を有し、SMN2遺伝子のコピー数が1以上であることが確認された患者に投与可能だ。乳児型SMA治療薬として2017年7月3日に承認され、8月30日の薬価収載と同時に発売。同年9月22日には乳児型以外のSMAへの効能追加を受け、全ての型のSMA治療への使用が可能になった。

P3試験でHFMSEスコアを有意に改善

セミナーでは、スピンラザの乳児型以外のSMAへの効能追加承認を取得した際の「CHERISH試験」の結果が発表された。同試験は、主に2型または3型SMA患者126例(日本人被験者8例)を対象に行われた、国際共同、第3相、無作為化、二重盲検、シャム処置対照試験。主要評価項目は、15か月目におけるHammersmith Functional Motor Scale-Expanded(HFMSE)スコアのベースラインからの変化量だった。HFMSEは、SMAの子どもの運動機能を評価するための臨床試験で用いられた検証済みの評価尺度。合計スコアの範囲は0~66で、スコアが低いほど運動機能が低いことを表す。

試験の結果、投与開始後15か月目におけるHFMSEスコアは、中間解析時には、スピンラザ群で4.0点増加、対照群で1.9点減少(95%信頼区間:5.9(3.7-8.1)、p=0.0000002)。最終解析時には、スピンラザ群で3.9点増加、対照群で1.0点減少(95%信頼区間:4.9(3.1-6.7)、p=0.0000001)と、対照群に比べてスピンラザ群で有意な改善が認められた。

竹島氏「SMAの名前は知っているが、一番には思いつかない現状」


兵庫医科大学小児科学講座主任教授 竹島泰弘氏

また、同セミナーでは、兵庫医科大学小児科学講座主任教授の竹島泰弘氏がSMA治療について講演した。

SMAは、生後0~6か月で座れないI型、7~18か月で座った姿勢を保てるII型、生後18か月以降で支えなしで歩けるIII型、成人型で全マイルストーン達成可能なIV型に分類される。最も患者数が多い1型の特徴的な症状としては、深部腱反射がないこと、舌線維束攣縮があることが挙げられる。

スピンラザの承認を受けて、「早期の治療開始が大切だ」と語った竹島氏。しかし、そのためのSMA早期発見には課題が残る。竹島氏によれば、「SMAの診断は、専門医でない一般の小児科医であれば、検診の際に見落としてしまう場合もある」という。「疾患の名前は知っているが、一番には思いつかないというのが現状だ」(竹島氏)。早期治療開始のためにも、さらなるSMAの啓発活動の必要性を訴えた。

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