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難聴を有するミトコンドリア病患者対象、MA-5の医師主導P2試験開始-東北大ほか

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2025年11月26日 AM09:00

ミトコンドリア病に対する有効な治療法は確立されていない

東北大学は11月19日、難聴を有するミトコンドリア病患者を対象とするMitochonic acid-5(MA-5)の医師主導第2相臨床試験を、2025年12月から国内4医療機関で開始すると発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科・医工学研究科の阿部高明教授、同大病院耳鼻咽喉・頭頸部外科の本藏陽平講師、順天堂大学大学院医学研究科小児思春期発達・病態学/難治性疾患診断・治療学の村山圭教授らの研究グループによるもの。


画像はリリースより
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ミトコンドリアは、細胞内のエネルギー産生を担う細胞小器官であり、生命活動維持に必要なエネルギー(ATP)の95%を産生する。ミトコンドリアの機能異常によってATP産生が低下すると、ミトコンドリア病が引き起こされる。ミトコンドリア病の治療として、これまでビタミン剤の内服などが行われてきた。しかし、進行性の臓器障害に対する有効な治療薬はなく、早期の治療法開発が望まれていた。

また、ミトコンドリア病患者の難聴以外にも、ミトコンドリアの機能異常は加齢性難聴、騒音性難聴、薬剤性難聴に関連することが知られている。世界保健機関(WHO)によると65歳以上の人口の30~40%が難聴によりハンディキャップを有しているとされるが、治療薬がないのが現状である。

新しいメカニズムでATP産生を高める治療薬候補「MA-5」

同大の阿部高明教授らは、これまでにミトコンドリア病の新規治療薬「MA-5」の開発を行ってきた。MA-5はミトコンドリアの内部構造(クリステ)を維持する重要なタンパク質である「ミトフィリン」に結合し、ATPを合成する酵素複合体の重合を促進することでATP産生の効率を高める新しいメカニズムを持つ化合物である。

MA-5は、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)、リー脳症、レーバー病、カーンズ・セイヤー病などのミトコンドリア病患者由来の皮膚培養細胞の生存率を上昇させることが確認されている。また、MA-5をミトコンドリア機能異常マウスに投与すると、心臓や腎臓の機能異常が改善し、生存率も向上することが明らかになっている。各種マウス難聴モデル(加齢性難聴、騒音性難聴、薬剤性難聴)においても、MA-5が聴力改善に有効であることが示されている。さらに、iPS細胞を用いて作製した内耳細胞では、MA-5が内耳細胞のATPを増加させ、細胞を活性化することが見出されている。これらの結果から、MA-5がミトコンドリア病患者の各種症状の改善とともに、難聴の治療薬となる可能性が示唆されていた。

これまでにMA-5は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)ムーンショット型研究開発事業の支援を受け、健常人を対象とした第1相臨床試験が終了しており、健常人における安全性と薬物動態が確認されている。

全国4施設が参加する医師主導P2試験、聴力に対する治療効果も評価対象

今回の治験は、難聴を有するミトコンドリア病患者を対象とするMA-5の医師主導・プラセボ対照・二重盲検・多施設共同探索的第2相臨床試験。順天堂大学と東北大学を中心に、全国4施設(順天堂大学医学部附属順天堂医院、東北大学病院、東京医療センター、自治医科大学附属病院)において2025年12月から実施される。

期間中は、難聴を有するミトコンドリア病患者に異なる量のMA-5またはプラセボを投与する。治験では、安全性を確認しながらミトコンドリア病患者におけるMA-5の薬物動態と各種症状に対する治療効果を追跡するとともに、聴力に対する有効性を探索的に評価する予定である。

ミトコンドリア病だけでなく幅広い疾患の治療薬となる可能性に期待

同治験により、MA-5が現在治療法のないミトコンドリア病に対する新たな治療薬になる可能性がある。また、ミトコンドリア病に伴う難聴だけでなく、加齢性難聴、騒音性難聴、薬剤性難聴の治療薬としての適応が期待される。

「将来的には、加齢によるミトコンドリア機能低下に伴う各種疾病(サルコペニア、認知症、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳梗塞、慢性腎臓病)の発症予防や治療につながる薬の開発が期待される」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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