腰・膝を傷めない「ソフトランディングテクニック」の効果を検証
大阪公立大学は10月31日、衝撃の少ない歩き方(ソフトランディングテクニック)を用いた歩き方指導の有効性を検証した結果を発表した。この研究は、同大大学院生活科学研究科の本宮暢子特任教授、春名了輔大学院生(博士後期課程3年)、ダイナミックスポーツ医学研究所の土井龍雄氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Sensors」にオンライン掲載されている。

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歩くことは、健康増進や疾病予防を目的に行われる手軽な運動である。歩幅を広げて歩くと、下半身の筋肉が多く使われるため筋力が向上するといわれているが、着地の衝撃が増すため、膝や腰に負担がかかり痛みを引き起こす可能性も考えられる。
研究グループは、どのように歩くのが高齢者にとってよいのかについて研究を進めており、先行研究において、高齢者に役に立つ、腰、膝などを傷めない、「ソフトランディングテクニック(Soft-Landing Techniques)」という、衝撃の少ない着地の歩き方を考案。今回の研究では、高齢者を対象に、ソフトランディングテクニックを用いた歩き方指導の受講前後で歩行測定を行い、その効果を検証した。
高齢者223人にソフトランディングテクニックを指導、受講前後の歩行を比較
今回の研究では、医師から運動制限を受けていない自力歩行が可能な高齢者223人(男性31人、女性192人、平均年齢74.4歳)が、関西および東海地区の10会場で90分間のウォーキングクラスに参加した。歩行指導では、上体をまっすぐに保持し、大幅ではなく、安定した姿勢で歩くソフトランディングテクニックを学んだ。その歩行指導の受講前後において、参加者全員がセンサー(加速度計測定システム)を腰に付けて10メートル歩行し、歩数、歩幅、歩行速度、腰部での上向き加速度を測定した。また、最後のアンケート調査では、測定した値を理解したかどうか、歩行時に痛みはなかったか、歩き方の意識などを確認した。
指導後に歩数が増加、着地衝撃を表す上向き加速度が減少
結果、ウォーキングクラスに参加した高齢者の歩行指導後の測定値は、歩数が増加し、歩幅が小さくなり、上向き加速度が少なくなった。また、ソフトランディングテクニックを使用した歩き方や、10メートル加速度測定についての理解度は参加者の95%で確認された。さらに、再度測定をしたいと答えた参加者は、90%にのぼった。
日本人高齢者の健康増進に寄与すると期待
今回の研究により、ソフトランディングテクニックを理解し実践することで、高齢者が腰や膝への負担を減らして歩けるようになることがわかった。
「ソフトランディングテクニックの測定の仕方や、その測定値を参加者に伝える方法を論文で示した。研究は今後も継続して実施していく予定である。腰、膝などを傷めない歩き方を指導する取り組みが、さらに広範囲で展開され、日本人高齢者の健康増進に寄与することが期待される」と、研究グループは述べている。
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