アブセンティーズム・プレゼンティーズムを指標に、労働生産性への影響を調査
大塚製薬株式会社は10月7日、日本の労働者における診断疾患別の労働生産性に関する実態調査を実施したと発表した。この研究は同社とDeSCヘルスケア株式会社、京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻健康管理学講座健康情報学の中山健夫教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Occupational Health」に掲載されている。

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日本では少子高齢化と出生率の低下に伴い、労働力人口の減少と医療費の増加が深刻化している。このような状況の中、企業や社会の持続可能性を支えるためには、労働者一人ひとりの健康と生産性の維持・向上が重要な課題とされている。
従業員の健康問題は、アブセンティーズム(疾患による欠勤)やプレゼンティーズム(出勤しているが心身の不調によって業務効率が低下している状態)として現れ、企業活動に大きな影響を及ぼす。
今回の研究は、日本における疾患ごとの労働生産性の実態を明らかにすることを目的に実施。疾患別の労働生産性とその損失コストを評価した。
日本労働者3万人のレセプトデータとWPAIスコアを解析
今回の研究は、日本の多様な職種に従事する男女3万1,540人(男性2万2,825人、女性8,715人。健康保険組合加入者でDeSCヘルスケアが提供するアプリkencom登録者)を調査対象とした。2021年1月~12月に取得した診療報酬明細書データとWPAI(Work Productivity and Activity Impairment Questionnaire:仕事の生産性及び活動障害に関する質問票)のスコアを活用し、AICD-10コードの大分類にて分類した疾患(44疾患)における労働生産性の実態調査を実施した。
労働生産性に影響する疾患が判明、精神・消化器・女性特有で深刻
分析の結果、以下が明らかになった。
・男女ともにうつ病、不安障害、片頭痛などは、有病率が低くても、プレゼンティーズム、アブセンティーズムともに高かった。
・プレゼンティーズムに大きく影響していたのは、男女ともにうつ病、不安障害、統合失調症、双極性障害、不眠症といった精神疾患であった。
・アブセンティーズムに影響を与えていたのは、男性では双極性障害、統合失調症、うつ病、片頭痛などであった。女性では、片頭痛、うつ病、不眠症、下痢性疾患などであった。
・男女ともに期間有病割合が高く、プレゼンティーズムも高いのは、食道、胃および十二指腸の疾患、アレルギー性鼻炎などであった。
・女性特有の疾患である月経障害は、プレゼンティーズム、アブセンティーズム双方に影響を及ぼしていたが、特にプレゼンティーズムに大きな影響を与えていた。また、女性は男性よりも、アトピー性皮膚炎にプレゼンティーズム、アブセンティーズムともに影響を受けていた。
プレゼンティーズムの月間損失額は1人約4万円
また、損失コストをみると、プレゼンティーズムがアブセンティーズムを大きく上回っていることが明らかになった。1人当たりの月間労働生産性損失額の平均は、アブセンティーズムの男性5,569円、女性4,403円に対し、プレゼンティーズムは男性3万9,935円、女性3万9,004円であった。
疾患別の損失データ、企業の健康経営推進に活用期待
今回の研究成果は、企業が健康経営を推進する上で、従業員の労働生産性に損失を与えている疾患を把握するためのデータとして活用が期待される。
「健康保険組合に加入している方々でアプリを介して、労働生産性の評価尺度を回答いただいた結果と、その方々の保険請求レセプトデータを用いることによって、日本の現役世代の方々にとってどのような疾患が労働生産性に損失を与えるのか、全体像を知ることができた。これは、レセプトデータとアプリによる評価データを組み合わせて得られた意義のある成果と言える。今後、さらなる解析を行うことによって、より詳細な研究結果が示されることが期待される」と、研究グループは述べている。
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・大塚製薬株式会社 プレスリリース


