メラトニン受容体作動薬によるパーキンソン病治療、動物実験では相反する結果が存在
岐阜薬科大学は9月29日、メラトニン受容体作動薬の抗パーキンソン作用について、保険請求由来データベースで検証したと発表した。この研究は、同大実践薬学大講座病院薬学研究室の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Pineal Research」に掲載されている。

画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
パーキンソン病は世界中で数百万人が罹患しており、病気の予防と治療に大きな進展がなければ、その罹患率と有病率は2030年までに30%以上増加する可能性がある。近年、パーキンソン病の新規治療戦略として、睡眠と概日システムを標的とすることが注目されている。
パーキンソン病では、黒質のドーパミン作動性ニューロンが進行性に喪失し、α-シヌクレイン(α-syn)からなるレビー小体およびレビー神経突起の形成が起こる。ドーパミンニューロンにおけるα-synの蓄積はアポトーシスを誘導し、最終的に症状を引き起こす原因となる。
先行研究の動物実験では、メラトニン受容体作動薬が、MT1受容体の活性化やPARP阻害により、α-synの凝集を抑制することによって抗パーキンソン作用を示すことが報告されていた。一方で、アゴメラチンがPARP1の発現を変化することなく、カスパーゼ3を発現し、アポトーシス関連因子を誘導することにより、パーキンソン症状を示す可能性も示唆されていた。
個別症例安全性報告のデータベースによる関連性研究、報告バイアスなど課題
これまでに研究グループは、米国食品医薬品局(FDA)によって集積された個別症例安全性報告のデータベース(FAERS)を用いて、メラトニン受容体作動薬とパーキンソン病との関連性について報告していた。しかし、個別症例安全性報告のデータベースの解析では、報告バイアスなどさまざまな研究限界もあった。
保険請求由来データベースで検証、メラトニン受容体作動薬ラメルテオンと負の相関を確認
そこで今回の研究では、リアルワールドデータの1つとして、近年、数多くの臨床研究にも用いられている保険請求由来のデータベース(DeSCデータベース)を用いて、日本国内で販売されているメラトニン受容体作動薬であるラメルテオンとパーキンソン病との関連性について検証した。
検証には、暴露前後のシーケンス(順序)に対する対称性を評価する手法であるSequence Symmetry Analysisを用いた。その結果、ラメルテオンの使用とパーキンソン病との間に負の相関が示された(ASR:0.959、95%信頼区間:0.955~0.964)。層別解析においても45歳から74歳の患者群で、男性、女性ともに同様な関連性を示した。
ラメルテオンとパーキンソン病との関連性、新規治療戦略につながると期待
今回の研究は、個別症例安全性報告を用いた、ヒトを対象にメラトニン受容体作動薬とパーキンソン病との関連性を評価した研究グループの先行研究の報告に続く、リアルワールドデータを用いた現時点で唯一の検証報告である。「今回の研究で示されたラメルテオンとパーキンソン病との関連性については、パーキンソン病の新規治療戦略につながることが期待される」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・岐阜薬科大学 研究教育成果


