意図せずよだれが流れ出てしまうことで日常に支障を来す「慢性流涎」
帝人ファーマ株式会社は6月24日、Merz Therapeutics GmbH(以下メルツ社)から日本における共同開発・独占販売権を取得しているA型ボツリヌス毒素製剤「ゼオマイン筋注用50単位、100単位、200単位」(一般名:インコボツリヌストキシンA)について、同日、日本初となる「慢性流涎(まんせいりゅうぜん)」の効能又は効果の追加承認を取得したと発表した。
慢性流涎は、分泌される唾液の量が嚥下する量より多くなり、意図せず口からよだれが流れ出る疾患。さまざまな原因によって引き起こされるが、主な原因としてパーキンソン病、非定型パーキンソニズム、脳卒中、脳損傷、脳性麻痺、筋萎縮性側索硬化症、筋ジストロフィーなどの神経系疾患が知られている。
慢性流涎の患者は、意図せずよだれが流れ出てしまうことで、外出を控える、会話や食事がしづらい、口の周りに炎症が起きるなど、日常生活に支障を感じている。また、家族や介護者にとっても、患者の衛生面や健康面の管理のほか、頻繁な着替えや洗濯が必要になることなどが大きな負担となっている。
第3相試験の成績に基づき、慢性流涎を効能効果とする日本初の医薬品に
ゼオマインは、帝人ファーマが2017年に日本国内における共同開発・独占販売権をメルツ社から取得した製品。2020年に上肢痙縮の効能又は効果で製造販売承認を得て販売を開始し、2021年には下肢痙縮の効能又は効果の追加承認を取得した。
さらに今回、帝人ファーマが実施した日本国内第3相試験およびメルツ社が実施した海外第3相試験の成績に基づき、同剤3番目の効能又は効果となる慢性流涎の承認を取得。これにより、本剤は慢性流涎を効能又は効果とする日本初の医薬品となった。
アセチルコリンの放出を阻害し唾液腺からの水と電解質の分泌を低下させ、症状を改善
A型ボツリヌス毒素注射剤である同剤を唾液腺内に投与すると、コリン作動性神経終末からのアセチルコリンの放出を阻害することで、唾液腺からの水と電解質の分泌を低下させ、流涎症状を改善する。同剤は、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)により産生されるA型ボツリヌス毒素から、メルツ社が開発した精製技術を用いて複合タンパク質を取り除くことにより、神経毒素のみを有効成分とする特徴を有する。
同剤は現在、国内外の81か国で承認されており、慢性流涎に関しては米国および欧州をはじめとする51か国で承認されている(2025年4月時点)。
両側の耳下腺および顎下腺に100単位を分割して注射、再投与や投与間隔の短縮も可能
同剤は通常、成人にはインコボツリヌストキシンAとして合計100単位を分割して両側の耳下腺(片側につき30単位)および顎下腺(片側につき20単位)に注射するが、患者の状態により適宜減量する。また、再投与は前回の効果が減弱した場合に可能だが、投与間隔は16週以上とする。また、患者の状態により投与間隔は14週まで短縮可能。
なお、販売名は暫定的に「筋注用」のままとなっているが、慢性流涎に対しては耳下腺および顎下腺への投与であるため、販売名の「筋注用」の部分を今後、変更する予定としている。
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・帝人ファーマ株式会社 プレスリリース


