初回の足関節捻挫患者101人対象、受傷~回復までの関節安定性変化をエコーで追跡
北里大学は5月9日、足首の捻挫において靭帯の安定性が回復するまでの期間を超音波画像で追跡評価した世界初の研究成果を発表した。この研究は、同大医療衛生学部の河端将司講師(責任著者)、大学院医療系研究科博士課程2年の内田悠登氏(筆頭著者)、くまざわ整形外科の熊澤祐輔医師、コニカミノルタ株式会社らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Experimental Orthopaedics」に掲載されている。

足関節(足首の関節)の捻挫は、スポーツ現場で最も多く発生する外傷の一つだ。一方、明確な競技復帰の基準がないまま復帰する例が多く、再発率は50%を超えるとされている。今回の研究では、初回の足関節捻挫患者101人を対象に、受傷から回復に至るまでの関節の安定性変化を評価するため、エコー(超音波検査)を用いて経時的に追跡した。
従来の競技復帰可能「1週間」に対して、より長い期間を要することを示唆
ストレステスト(関節に特定の方向から負荷をかける検査)中の足関節の不安定性(靭帯のゆるみ)をエコーで測定したところ、Grade 1(靱帯の損傷はあるが断裂はない)では約2週間、Grade 2および3(靭帯の部分断裂および完全断裂)では6週間程度をかけて、健側(外傷がない側の足)と同等レベルまで回復していく傾向が見られた。この結果は、従来の「1週間で競技復帰可能」とされる一般的な考えに対して、靭帯の構造的な安定性の回復にはより長い期間を要することを示唆する重要な発見である。
足首の不安定性を軽視したまま競技に復帰、二次的な障害発生の可能性も
足首の不安定性を軽視したまま競技に復帰することで、膝・股関節・腰などへの二次的な障害を引き起こす可能性も指摘されている。今回の研究結果は、「見えない靭帯の回復過程」を見える化する新たな医療的アプローチであり、将来的な再発や重症化の予防に貢献するものである。今後の展望について、「エコーで関節の状態を定量的に可視化することに加え、AIによる診断補助を活用することで、より正確な復帰判断ができるよう研究を進めている。捻挫を繰り返すことなく安全に競技復帰できるよう、最適な復帰時期の提案を目指したい」と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・北里大学 プレスリリース