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リードレスペースメーカによる新規治療法、従来型の制約を克服-滋賀医大

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2025年04月25日 AM09:00

従来型ペースメーカ、リードの断線や感染リスクなどが課題

滋賀医科大学は4月15日、従来のペースメーカの10分の1の大きさで、リードを必要としない「」を用いた新規治療法を実施し、成功したことを発表した。この研究は、同大医学部附属病院循環器内科・不整脈グループの小澤友哉講師、中川義久教授らによるもの。

従来のペースメーカ治療では、本体を胸部皮下に植え込み、心房・心室への電気刺激を送るためのリードを心腔内に留置し、本体と接続する。この方法では、鎖骨下静脈から挿入されたリードが上肢の運動で断線するトラブルや、体表面から挿入部の傷が見えるといった外見上の問題、さらにはペースメーカ感染のリスクなどが課題となっていた。

リードなし、前胸部切開が不要のペースメーカによる治療を実施

今回の研究では、本体とリードの機能が一体化した新しいタイプのペースメーカ「リードレスペースメーカ」を使用した。カテーテルを用いて心房用と心室用の計2本のリードレスペースメーカを植え込むことで、本体同士が特殊な無線通信で連携する。心臓の拍動と同期して作動するため、リードが不要という点が大きな特徴だ。また、前胸部を切開せずに施術が可能なため、患者の身体的負担が軽減される。

運動制限が軽減され、入院期間も大幅に短縮

治療を受けた患者には合併症の発症はなく、ペースメーカも問題なく作動した。手術翌日には通常通りに離床が可能となり、無事に退院した。

リードレスペースメーカでは、従来のペースメーカ治療と比較して、運動制限、特に腕の動きや負荷の制限が軽減された。また、前胸部を切開しないため胸に傷が残らず、入院期間も大幅に短縮された。

埋め込み後のメンテナンスや手術の難易度には課題が残る

一方で、本体が小さい分、従来品と比較してリードレスペースメーカの寿命はやや短く(5~10年)、更新時には新たに本体を追加するか、場合によっては旧本体を抜去して新しく追加しなくてはならない。また、この治療法は非常に太いカテーテルを心腔内に誘導し操作するため、高度な技術を要し、熟練した術者のいる施設で実施する必要がある。

高齢者や感染リスクのある患者へのペースメーカ適応拡大に期待

リードレスペースメーカによる治療法は、ペースメーカが必要な患者に新たな選択肢を提供し、生活の質の改善に大きく寄与することが期待される。特に、高齢者や感染リスクが懸念される患者へのペースメーカ適応の可能性が高まると考えられる。

「感染リスクの低減により、従来のペースメーカでしばしば必要とされていた感染リード抜去術の大幅な減少も期待されており、ペースメーカ治療全体の安全性向上に寄与すると考えられる」と、研究グループは述べている。

 

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