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睡眠関連呼吸障害と嚥下障害が関連、脳卒中後の回復期リハビリで発見-科学大

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2024年11月26日 AM09:10

脳卒中患者でSDB有する割合は高い一方、あまり検査は行われていない

東京科学大学は11月18日、脳卒中発症後、リハビリテーションを目的として回復期病院に入院した患者を対象に、睡眠検査および嚥下機能評価を行い、)を有する者の割合が高いこと、またSDBの重症度が経口摂取度と関連することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野の戸原玄教授、山口浩平講師、柳田陵介医員らの研究グループによるもの。研究成果は「Journal of Prosthetic Dentistry」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

SDBは、高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病だけでなく、脳卒中のリスクも高める要因とされている。過去の研究によると、SDBがある場合、脳卒中の発症率が2~4倍に増加することが報告されている。また、脳卒中後には高い確率で嚥下障害が生じることが知られている。咽頭の筋肉や舌骨などの身体の構造物は、嚥下と睡眠の両方に関与しているため、脳卒中患者においてSDBと嚥下障害には関連があると考えられてきたが、これまで回復期病院における脳卒中患者を対象とした調査は行われていなかった。

脳卒中患者の中にはSDBを有する割合が高いものの、医師が睡眠に関する質問を行う、もしくは睡眠検査を行う割合はそれぞれ6%、9%と低いことが過去の報告で示されている。脳卒中患者におけるSDBは、不良な転帰と関連しているものの、SDBのスクリーニングは一般的ではない。一方、歯科医師は回復期病院において日常的に入院患者の口腔内診察や嚥下機能の管理を行っていることから、SDBを発見し、その後の介入につなげられる可能性がある。

回復期病院に入院中の患者を対象に睡眠検査を実施しAHIを測定

研究グループは、2021年8月~2024年3月の間に脳卒中と診断され、千葉県内のリハビリテーション病院(回復期病院)に入院した患者140人(平均年齢:73.3±12.4歳、男性78人)を対象に検討した。入院後、睡眠検査装置である「」を用いて就寝中に睡眠検査を行った。このうち91人(平均年齢:72.3±12.7歳、男性50人)が睡眠検査を完了し、解析対象となった。また診療録から、年齢、性別、肥満度を示すBody Mass Index(BMI)、意識レベルを示すJapan Coma Scale(JCS)、脳卒中の重症度を示すmodified Rankin Scale(mRS)、既往歴を示すCharlson Comobidity Index(CCI)、経口摂取レベルを示すFunctional Oral Intake Scale()といったデータを収集した。睡眠検査では就寝中に1時間あたりの無呼吸・低呼吸回数を示すApnea Hypopnea Index(AHI)を測定した。

93.4%でSDBを確認、FOISがAHIと関連していることも判明

その結果、対象者の93.4%でAHIが5以上、つまりSDBであることが確認された。また、FOISが6以下、すなわち食事形態を調整(刻む、柔らかくするなど)する必要があるか、経管栄養が必要な70人(平均年齢:72.0±13.1歳、男性39人)に限ると、SDBを有する割合が95.7%に達していた。

次に、SDBの重症度と経口摂取レベルの関連を検討するため、多変量解析を行った。その結果、年齢、性別、BMI、JCS、mRS、CCIといった因子を調整した上で、FOISがAHIと関連していることが明らかになった。

研究結果から、回復期病院に入院する脳卒中患者において、FOISが低い、すなわち食事形態の調整や経管栄養を必要とする程度が高い患者ほど、SDBが重症である可能性が示唆された。研究は、回復期病院における脳卒中患者のSDBの割合およびSDBと嚥下障害の関連を明らかにした初めての研究だ。

「歯科医師は口腔内を診察するだけでなく、回復期病院での摂食嚥下リハビリテーションにも携わっているため、舌や口蓋扁桃、軟口蓋などSDBの要因となりうる口腔内の特徴に気づき、適切な介入につなげられる可能性がある。これまで回復期病院では睡眠に注目されることがなかったが、嚥下障害とSDBの双方の視点から歯科医師が脳卒中患者に関与することで、回復期病院でのリハビリテーション医療への貢献度がさらに高まると考えられる」と、研究グループは述べている。

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