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生活習慣病の遺伝的リスクと予防効果の関係、PRS×AIで評価-京大ほか

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2024年10月11日 AM09:20

生活習慣病の遺伝的高リスク群、生活改善による予防効果は?

京都大学は10月4日、機械学習とポリジェニックリスクスコアを用いて、冠動脈疾患、、脂質異常症、高血圧症の4つの生活習慣病とその主要なリスク因子である喫煙や肥満との関係が、その疾患のポリジェニックリスクスコアによってどのように変化するかを評価した結果を発表した。この研究は、同大白眉センター/医学系研究科の井上浩輔特定准教授、大阪大学の内藤龍彦助教(現:米国マウントサイナイ医科大学(Icahn School of Medicine at Mount Sinai)博士研究員)、岡田随象教授(兼:理化学研究所チームリーダー、東京大学大学教授)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Communications Medicine」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ゲノムワイド関連解析により、心血管疾患や糖尿病などさまざまな生活習慣病の遺伝的因子が明らかになってきた。そして、ゲノムワイド関連解析の結果を活用することで、遺伝的因子による疾患発症リスクを単一のスコアであるポリジェニックリスクスコアとして計算できるようになった。ポリジェニックリスクスコアは遺伝的高リスク群を予測できることから、個別化医療への将来的な応用が期待されている。

<一方、近年の疫学研究では、ある疾患の高リスク群が、その疾患のリスク因子を改善することで期待される治療・予防効果が高い集団(高ベネフィット群)と必ずしも一致しない(=ある疾患の高リスク群において、治療や予防医療がどの程度効果的なのかがわからない)ことがわかってきた。そのため、リスクのみではなくベネフィットにも着目することの重要性が指摘されている。そして治療・予防効果がどのように異なるのか(効果の異質性)を把握することが、そのようなベネフィットに着目した医療を実現する上で直接的に役に立つ情報になる。これまで、生活習慣病のポリジェニックリスクスコアが高い集団(遺伝的高リスク群)が、喫煙や肥満といった生活習慣リスク因子を改善した際に高い予防効果が得られるかどうかは明らかではなかった。

冠動脈疾患・2型糖尿病・脂質異常症・高血圧症と主要リスク因子の関係、各疾患PRSによる変化を評価

今回研究グループは、機械学習法の因果フォレストを用いて、生活習慣病の予防効果がポリジェニックリスクスコアによってどのように変化するかを評価した。因果フォレストは、ある介入の効果(観察研究においては曝露とアウトカム関連)を個人レベルで予測し、効果の異質性すなわち効果の個人間のばらつきを評価することができる手法だ。同手法をバイオバンク・ジャパンとUKバイオバンク(英国)が保有するゲノム・臨床情報に適用することで、冠動脈疾患、2型糖尿病、脂質異常症、高血圧症の4つの疾患とその主要なリスク因子である喫煙や肥満との関係が、その疾患のポリジェニックリスクスコアによってどのように変化するかを評価した。

強い正の相関は、冠動脈疾患PRSと喫煙/2型糖尿病PRSと肥満

結果、バイオバンク・ジャパンでは「冠動脈疾患のポリジェニックリスクスコア」と「喫煙が冠動脈疾患に与える影響」に、UKバイオバンクでは「2型糖尿病のポリジェニックリスクスコア」と「肥満が2型糖尿病に与える影響」に強い正の相関が見られた。この結果は、これらの疾患と生活習慣リスク因子の組み合わせにおいて、ポリジェニックリスクスコアが高い群では、生活習慣リスク因子を改善した際に高い疾患予防効果が見込める可能性を示唆している。

PRS高・リスク因子改善でも、高い疾患予防効果が得られるとは限らない

一方、その他の疾患とリスク因子の組み合わせにおいては、ポリジェニックリスクスコアとリスク因子による疾患予防効果との正の相関が、必ずしも見られなかった。この結果は、ポリジェニックリスクスコアが高い人たちにおいて、それらのリスク因子を改善した場合でも、必ずしも高い疾患予防効果が得られるとは限らないことを示唆している。言い換えると、ポリジェニックリスクスコアが低くても、生活習慣の改善によって高い疾患予防効果が期待できる人たちが多く存在しうると解釈することができる。

機械学習活用のゲノム個別化医療の礎として期待

今回の研究では、機械学習を用いて生活習慣病の遺伝的リスクと予防効果との関係を評価した結果、疾患やリスク因子によりさまざまなパターンを呈しうることが示された。機械学習を活用した将来的なゲノム個別化医療の礎になることが期待される、と研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

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