食道アカラシアの診断、バリウムや内視鏡検査による患者負担が課題
大阪公立大学は9月18日、胸部レントゲン写真を用いて食道アカラシアを診断するAIモデルを開発したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科消化器内科学の落合正研究医、沢田明也病院講師、藤原靖弘教授、人工知能学の植田大樹准教授、放射線診断学・IVR学の山本晃准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に掲載されている。

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食道アカラシアは食道と胃の境目にある下部食道括約筋の弛緩不全と、食道体部の正常な蠕動の低下を特徴とする食道運動障害で、症状の自覚から診断まで平均6.5年かかるという報告がある。診断の遅れは食道の拡張や蛇行を増悪させ、治療効果を減弱させる恐れがあるため、早期の診断が望まれる。診断には、食道内圧検査、食道造影検査、上部消化管内視鏡検査が用いられるが、体への負担が比較的大きい検査である。アカラシアは食道の拡張や蛇行、食道内の液貯留を伴うことが多く、胸部レントゲン写真がこれらの特徴的な所見を捉え、食道アカラシアの診断に役立ったという報告がある。また、近年、胸部レントゲン写真を用いたAIモデルが、肺がんなど多くの疾患に対して高い診断能を示すことが確認されている。そこで研究グループは、食道アカラシア診断のための「胸部レントゲン写真AIモデル」を開発することを目的にした。
食道アカラシア患者・非患者の胸部画像を用いてAI モデルを開発、高精度の診断能を示す
研究グループは、2017年1月から2023年3月に大阪公立大学医学部附属病院で撮影された、食道アカラシア患者(144人、207枚)および年齢と性別をマッチさせた非アカラシア患者(240人、240枚)の胸部レントゲン写真を用いて、深層学習によってAIモデルを開発した。
続いて2023年4月から9月に撮影された食道アカラシア(17人、17枚)および非アカラシア患者の胸部レントゲン写真(64人、64枚)からなるテストデータセットを用いてAIモデルの診断能を検証したところ、高精度な値(AUC0.964、感度0.941、特異度0.891)を示した。また、医師(消化器内科医と放射線科医)によるアカラシアの診断能と比較したところ、AIモデルの診断能は医師よりも高い感度と特異度を示した。
簡便かつ低侵襲にスクリーニング、早期発見に期待
日本では健康診断で胸部レントゲン写真を撮影することが多いため、今回の成果により健康診断が食道アカラシアの早期発見につながると期待される。
「食道アカラシア患者は胸痛を伴うため循環器内科を紹介されることもあり、心機能の評価のために撮影された胸部レントゲン写真がアカラシアの診断に役立つ可能性がある」と、研究グループは述べている。
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