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ASD児の母親が描く「良い母親像」、日米での違いを明らかに-北陸学院大ほか

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2024年02月09日 AM09:20

日本の「母性神話」がストレスの一因に、ASD児の母が考える「理想的な母親像」は?

北陸学院大学は2月6日、日米の自閉スペクトラム症()児を持つ母親を対象に「良い母親像」の調査を行った結果を発表した。この研究は、同大教育学部幼児教育学科のポーター倫子教授、神戸大学大学院人間発達環境学研究科の山根隆宏准教授、テキサス大学健康科学センターヒューストン校の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Autism and Developmental Disorders」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ASD児の母親は、高いストレスを抱えていることが広く知られている。この現象は、他の障害を持つ子どもを育てる母親よりも顕著であり、日本だけでなく他国でも同様の結果が報告されている。研究グループは、ASD児の親のストレスに関する理解を深め、効果的な支援策を見つけるために、母親の役割に焦点を当てた。なぜなら、自分が理想とするあるいは社会が期待する「理想的な母親像」に近づくことがストレスを緩和する一方で、ギャップがある場合にはストレスを増加させる可能性があると考えたからだ。特に、日本では、「母性神話」が根強く存在し、子どものために自己犠牲を払う母親像が求められる傾向があり、これがストレスの一因とされてきた。このような背景から、第一歩として、ASD児の母親が考える「理想的な母親像」について調査した。

「ASD児の母親像」初の国際比較研究、日米ASD児の母へインタビュー調査

これまでは、ASD児の母親像に関する研究が日本国内では行われておらず、国際比較研究も存在していなかった。また、ASD児と一般の子どもに対する母親像の比較研究も全く行われていなかったため、これらの領域に焦点を当てて、研究を実施した。

今回の研究では、米国と日本のASDの診断を受けた2~12歳の子どもを持つ母親(米国:52人、日本:51人)を対象にインタビュー調査を実施。「良い母であるとはどのような意味か」「自閉症を抱える子どもにとって良い母親であるとはどのような意味か」を質問した。また、一般的な「良い母親」とASD児の「良い母親」の特徴について尋ね、それから得られた母親像をカテゴリー化した。次に、一般の「良い母親」とASD児の「良い母親」のカテゴリーの種類やカテゴリーに該当する研究参加者の数を日米間で比較し、検討した。

日米とも、最も重要な母親像は「子どもを導く」

調査の結果、日米の母親とも、子どもを導くことが最も重要な良い母親の特徴と考えていることがわかった。これは、一般の母親像、ASD児の母親像のどちらにも見られる傾向だった。その他に顕著に見られた特徴としては、「受容する」「辛抱強い」「理解を示す」が挙げられた。

日本は「子どもを受け入れ、見守り、理解しながら適切なサポートを提供」が良い母親像

次に、ASD児の「良い母親」の日米の違いを調べ、統計的に有意差が見られたカテゴリーのみを取り上げた。その結果、「子どもを擁護する」「自分で学び知識を身につける」「要求のバランスをとることができる」「辛抱強い」であり、いずれも米国の方が多く見られた。このことより、米国の場合、良い母親とは子どものアドボカシー者としての役割をもち、ASDについて積極的に学んでいくこと、また仕事や子どもの療育などの忙しいスケジュールをこなしていけるような能力が重視されていることがわかった。一方、日本の母親の場合、有意差は見られなかったが、子どもを受け入れ見守り、理解しながら子どもに合った適切なサポートを提供することが重視されていた。

米国は「子どもを擁護する」「自分で学び知識を身につける」が良い母親像

ASD児の「良い母親」と一般の「良い母親」との違いとして、米国では「子どもを擁護する」「自分で学び知識を身につける」母親像が、ASD児の「良い母親」として特に際立っていることが明らかになった。それと対照的に、一般的な子どもの「良い母親」としては、「大事に育てる」が強調されていた。一方、日本の場合、ASD児の「良い母親」として特に顕著なのは子どもへの「理解を示すこと」であり、これが一般の「良い母親」と比べてより強調されていることが明らかになった。

日米の母親像の差を考慮し、親支援プログラム検討を

ASD児を持つ親を対象に、さまざまなペアレントトレーニングが紹介されている。その中には、欧米で開発され、日本の文化に適するように検討され、導入されたものもあれば、日本で開発されたものもあるだろう。しかし、この日米の母親像の差で見られるように、実際それぞれの国の母親がどのような母親を目指しているのかについては、大きな違いが見られる。それらを考慮せずに親支援を行おうとすれば、理想と現実のギャップに悩む親が出てくる可能性がある。今後は、今回の研究で示された日本の良い母親の特徴を踏まえながら、親支援プログラムを検討していきたいとしている。

同時に、日本の良い母親像としてはほとんど挙げられなかった、子どものアドボカシー者としての役割を果たし、子どもが療育やサービスを受けられるようにしたり、ASDについて学び知識を得たりする姿は、自閉症療育や教育の中で、親がより主体性をもって子どもの援助者になるために必要な課題である可能性を指摘している。また、親が子育てに自信を持ち、そのエンパワメントを育てていくためにも、日本文化に根づいた積極的な母親像についても理解が深まることを期待する、と研究グループは述べている。

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