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日本人飲酒行動と食道がん、遺伝型の組み合わせが影響と判明-愛知県がんセンターほか

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2024年02月05日 AM09:30

がんリスクにも関わる飲酒行動、ALDH2遺伝子のSNP以外に遺伝的要因は存在するのか?

愛知県がんセンターは1月27日、17万人以上の日本人集団を対象にゲノム解析を行い、ALDH2の遺伝的な違いとの組み合わせによって飲酒行動に影響を与える別の遺伝的要因を探索した結果、7つの遺伝子領域に見られた遺伝的要因が、ALDH2の遺伝的な違いと組み合わさることで飲酒行動に影響を与えることを突き止めたと発表した。この研究は、同センターがん予防研究分野の松尾恵太郎分野長、小栁友理子主任研究員、名古屋大学大学院医学系研究科実社会情報健康医療学の中杤昌弘准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Science Advances」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

飲酒はさまざまな疾患や障害に関連する。アルコールの代謝に関わる酵素ALDH2の遺伝子「」には、日本人の飲酒行動に最も強力な影響を与える遺伝的要因となる、重要な遺伝的違い()が存在する。その重要なバリアントは、ALDH2遺伝子上の特定の場所にある1つの塩基がGからAに変化する一塩基多型()で、「rs671」と呼ばれている。rs671により、日本人は、GG型、GA型、AA型という3つの遺伝型に分けられ、どの遺伝型を持つかによって飲酒行動に明確な違いがある。GG型の場合、アセトアルデヒドを代謝できるため飲酒後のフラッシング反応が起こりにくく、飲酒する傾向にある。欧米系集団ではほとんどがこのGG型である。一方、AA型はアセトアルデヒドの分解能力が極めて低くほぼ飲酒しない。中間のGA型はGG型よりアセトアルデヒドの分解能力が低いものの、人によって幅広い飲酒パターンを示す。

この遺伝型による飲酒行動の違いは、頭頸部がんや食道がんなどの飲酒関連がんのリスクにも大きく寄与する。飲酒してもアセトアルデヒドが蓄積しにくいGG型と飲酒をしないAA型は飲酒関連がんのリスクが低いのに対し、GA型は飲酒によるアセトアルデヒド曝露量の上昇に伴い飲酒関連がんの最も高いリスクを有する。このため、GA型の幅広い飲酒行動を決定する別の遺伝的要因の同定は、飲酒関連がんの個別化予防に寄与すると考えられる。

日本人集団17万5,672人のGWASを実施

研究グループはまず、日本分子疫学コンソーシアム(J-CGE)、ながはまコホート、バイオバンク・ジャパンより収集された日本人集団17万5,672人の遺伝情報と飲酒行動の情報を用いて、日本人のゲノム全体の中からALDH2 rs671の遺伝型にかかわらず飲酒行動に関連するバリアントを探すゲノムワイド関連解析(GWAS、層別なし解析)を行った。その結果、ALDH2を含む6つの遺伝子領域(GCKR遺伝子、KLB遺伝子、ADH1B遺伝子、ALDH1B1遺伝子、ALDH1A1遺伝子、ALDH2遺伝子)上のSNPが飲酒関連バリアントとして同定された。

rs671遺伝型別の解析、遺伝型の違いで飲酒の程度が異なるバリアント同定

次に、rs671のそれぞれの遺伝型別にGWAS(層別あり解析)を行った。AA型は対象者のほとんどが飲酒を全くしないためAA型のみのGWASは行わなかった。層別あり解析の結果、GG型では3つの遺伝子領域(GCKR遺伝子、KLB遺伝子、ADH1B遺伝子)上のSNPが飲酒関連バリアントとして同定されたが、これらはrs671遺伝型がほとんどGG型である欧米系集団を対象とした飲酒行動GWASでよく検出される遺伝子領域と一致した。一方で、GA型ではアルコール代謝関連遺伝子であるADH1B、ALDH1B1、ALDH1A1、ALDH2遺伝子を含む6つの遺伝子領域(GCKR遺伝子、ADH1B遺伝子、ALDH1B1遺伝子、ALDH1A1遺伝子、ALDH2遺伝子、GOT2遺伝子)上のSNPが飲酒関連バリアントとして同定された。

層別あり解析により同定された遺伝子領域で最も関連の高い7つのSNPの飲酒への効果の大きさを調べたところ、各SNPの飲酒への効果の大きさは、rs671の遺伝型の違いにより大きく異なっていた。例えば、rs8187929はALDH1A1遺伝子上の1つの塩基がTからAのバリアントに変化するSNPだが、rs671がGG型の人がrs8187929にA塩基(TA型やAA型)を持っていても飲酒量は変わらないのに対し、rs671がGA型の人がrs8187929にA塩基を持つと飲酒量が増える。このようにrs671遺伝型で層別化したGWASを行うことで、遺伝型によって表現型(今回の場合は飲酒量)への影響が異なるSNPが明らかになり、SNPが単独ではなく複数組み合わさって表現型に影響していること(交互作用)が示された。

食道がんリスク、4つのSNPがrs671と交互作用を伴い関連と判明

さらに、層別あり解析で同定された7つのSNPと代表的な飲酒関連疾患である食道がんリスクとの関連を検討するため、同センター病院疫学研究(HERPACC)とバイオバンク・ジャパンにより収集された食道がん症例群と非がん対照群を用いた食道がん症例対照研究を行った。その結果、層別あり解析で同定された7つのSNPのうち4つが食道がんリスクに対してもrs671と「交互作用」を伴って関連していることが示唆された(P値<0.05)。例えば、rs122994はADH1B遺伝子上の1つの塩基がTからCのバリアントに変化するSNPだが、rs671 GA型の人が、rs122994にC塩基を持つと、それぞれ単独でのリスクを足し合わせた場合より食道がんのリスクが3.77倍上乗せされて高くなる。

遺伝型層別GWAS、表現型に強く影響のSNPと交互作用する新規SNP検出に有効な可能性

今回の研究結果から、飲酒行動の遺伝的背景には、rs671と複数のSNPが「交互作用」を伴い関与していることが示された。このように、「遺伝型層別GWAS」を用いた研究アプローチは、表現型に対して強力な影響を持つSNPがある場合、このSNPと交互作用を発揮する新規SNPを検出するための有効な手法であると考えられる。「層別あり解析で同定されたSNPには、飲酒行動だけでなく食道がんリスクにもrs671と交互作用を伴い関与するものが存在しており、日本人の遺伝的背景に基づく飲酒関連がんの個別化予防のさらなる促進に寄与することが期待される」と、研究グループは述べている。

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