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希少疾患、患者が直面する困難の全体像・優先すべき研究テーマを明らかに-阪大ほか

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2024年01月05日 AM09:10

患者視点、どのように政策形成過程に取り入れる?

大阪大学は12月22日、患者・行政経験者のメンバーらとともに、「希少疾患患者が直面する困難の全体像」と「希少疾患領域で優先すべき研究テーマ」を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の古結敦士助教、磯野萌子助教、加藤和人教授(医の倫理と公共政策学)ら、、各希少疾患患者団体などの研究グループによるもの。研究成果は、「Research Involvement and Engagement」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

近年、政策を形成する際に、何らかの根拠をもとに政策を立案し実装することが求められるようになってきている。それと同時に、その過程に当事者が関与することの重要性が認識されている。医療・健康分野においては、患者が医療現場における意思決定や医学の研究に積極的に参画できるように、流れが変わりつつある。実際に、日本の生命倫理専門調査会におけるヒトゲノム編集の研究ガバナンスによる議論では、、専門家、患者などステークホルダーが関与していることが明らかになっている。このような流れは、この分野に関連する政策を形成する過程にも波及していくことが予想される。しかし、どのようにすれば患者視点を政策の形成過程に効果的に取り込めるのか、という問題についてこれまで明らかにされていなかった。

希少疾患領域、より客観的な形で政策に患者の声を反映させることが課題

特に、今回の研究で対象とした希少疾患領域では、一部の、個々の患者会による陳情型で意見を伝えることに留まっており、患者会を持たない疾病の患者や、患者会活動が活発ではない疾病の患者の声も含め、希少疾患領域の政策に、より客観的な形で患者の声を反映させることが課題となっている。また、これまで、複数の希少疾患を対象にして、患者を含むステークホルダーが協働で研究の優先順位設定を行う取り組みはほとんど例がなかった。

10の希少疾患、患者・家族/研究者/行政経験者43人がワークショップで継続的に熟議

研究グループは、患者、患者家族といった当事者を含むさまざまな立場の人が継続的に意見を交わし、政策形成の際に参照可能なエビデンスを生みだしていくような「場=コモンズ」を作ることを目指して、「コモンズプロジェクト」を開始した。

今回の研究では、10疾患の希少疾患の患者・患者家族21人、研究者17人、行政経験者5人(合計43人)が計25回のワークショップを通して継続的に熟議を行った。このような継続的な熟議の場を通して、参加者がお互いの視点や考え方を学び合い、自身の成長と信頼関係の醸成を実感し、そのことが議論の深化に大きく寄与した。

医療だけでなく、生活・心理面の負担など多様な困難への直面を提示

研究の結果、希少疾患を抱える患者やその家族は、診断や治療等の医療面に関することだけではなく、生活面や心理面の負担、つながりや情報、認知・理解の不足をはじめとする、多岐にわたる、計り知れない困難に直面していることを改めて整理して提示することができた。

優先度の高い研究テーマは、生活・精神心理面/通院の負担軽減など

また、そのような困難に対して研究として取り組む際に、どのような研究テーマを優先して取り組むべきかという優先順位についても議論を行った。その際、「優先順位を設定するための基準=判断基準」を参加者全員で考えて選び、その判断基準を当てはめることで優先順位を設定。その結果、特に優先度の高いものとして、「日常生活の支障」、「経済的な負担」、「就労就学の悩み」などの生活面に関する研究テーマ、「不安」や「悲観」、「遺伝性疾患に特有の心理」といった精神心理面に関する研究テーマ、通院の負担(時間的・労力面の負担など)の軽減や解決を目指すような研究、が挙げられた。さらに、「研究者や行政経験者よりも患者や患者家族が重要視した判断基準」や、「特定の観点を持つ判断基準」を用いることで、別の観点から優先度の高い研究課題を明らかにした。

なお、同研究では、患者・患者家族も共に研究を進める立場として参画し、議論の進め方や結果のまとめ方についても共に検討を行い、患者著者として論文も共同執筆している。同研究プロジェクトからは、「患者の視点を反映した研究・政策形成に向けての提言」と題する政策提言も行った。

今後、政策形成過程へのステークホルダー関与方法として応用に期待

同研究成果は、希少疾患領域の政策形成、特に、今後の研究助成のあり方などを考える際に参照可能なエビデンスとして役立つと考えられる。また、今回用いられた手法は希少疾患領域を超えて、医療・医学、あるいはその他の政策形成の過程にステークホルダーが関与する方法として、今後の応用が期待される、と研究グループは述べている。

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