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皮膚のシミ・アザ治療につながる酸化ストレス抑制タンパク質を同定-大阪公立大ほか

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2023年12月26日 AM09:20

メラニン合成過程でも発生する活性酸素、メラノサイト自身が守られる仕組みは不明

大阪公立大学は12月21日、サイトグロビンの働きを阻害したメラノサイト(色素細胞)では活性酸素の量が増えることでメラニン色素生成が増加することを解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の吉里勝利特任教授、鶴田大輔教授、獣医学研究科の松原三佐子准教授ならびに日本メナード株式会社らの研究グループによるもの。研究成果は、「Pigment Cell & Melanoma Research」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

表皮細胞は、太陽からの紫外線を浴びているため細胞内に活性酸素が発生している。活性酸素は細胞に障害を与え、がん化を引き起こす危険性を高める。皮膚に存在するメラノサイトは皮膚の色素であるメラニンを合成する細胞で、このメラニンは紫外線を吸収することによって表皮細胞を保護している。しかし、メラノサイトによるメラニンの合成過程でも活性酸素が発生するため、メラノサイトには活性酸素の危険から自身を守る仕組みが備わっている。この仕組みは不明なことが多く解明すべき課題として残されていた。

サイトグロビン、メラノサイトの酸化還元調節因子として働くのか?

研究グループはこれまでに、サイトグロビン(CYGB)は、血管周囲に存在する線維芽細胞(周皮細胞)に発現するグロビンタンパク質であり、酸化還元反応を調節することで細胞の酸化ストレスを保護する役割を果たしていることを明らかにした。メラノサイトもこのCYGBを強く発現していることは他の研究グループによって報告されていたが、その生理学的役割は不明だった。そこで、研究グループは、CYGBが強い酸化ストレスからメラノサイトを防御する「酸化還元調節因子」として働いているとの仮説を立て、遺伝子発現抑制技術を用いてCYGBの発現を抑制したヒトメラノサイトを作成し検証した。

CYGBの発現抑制細胞、メラニン生成関連酵素やメラノソームのほかROS・NOも増加

メラニンは棘状の樹状突起を持つメラノサイトの中にあるメラノソーム(メラニンを合成する細胞内構造体、メラニン小胞)で合成される。合成はチロシナーゼ(TRP)、その関連酵素(TRP-1とTRP-2)、およびMITFと呼ばれるタンパク質などの働きで行われ、その過程は段階(ステージ)IからIVの順で進行する。

CYGBの発現を抑制(ノックダウン)した細胞CYGBKDは、メラノサイトの活性化の指標となる樹上突起形成とメラノソームの増加が認められた。また、メラニン生成に関わる関連酵素のmRNAおよびタンパク質発現がCYGBの発現抑制によって増強された。さらに、メラニン合成を促進することが知られている活性酸素(ROS)および一酸化窒素(NO)の量が増加した。これらの結果は、CYGBがメラノサイト内のROSやNOによる酸化ストレスを軽減することでメラニンの合成を抑制することを示しており、仮説を支持する結果となった。

皮膚メラノサイトで酸化ストレス抑制するCYGB、・アザの抑制治療に応用できる可能性

研究グループはCYGBが肝障害時における炎症や肝線維化を抑制することを以前に報告した。今回の研究によって、CYGBは肝臓での働きと同様に皮膚のメラノサイトでも酸化ストレスに対して抑制作用を担っていることが明確に示された。今回の研究成果は、メラニンが凝集してできる皮膚のシミやアザの形成の抑制などの美容関連製剤としてCYGBが利用できる可能性を示している。

メラノーマ治療薬としての応用研究も進める予定

「がん化したメラノサイトであるメラノーマでCYGBの発現を抑制すると細胞増殖が活発になるとの報告があることから、今後、CYGBはメラノーマの増殖抑制、さらには、メラノサイトのがん化を抑制する製剤(メラノーマの治療薬)として応用できないかという観点からも研究を発展させる予定」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

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