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妊娠前の母の食事の質、子の特定のぜん鳴パターンと関連-環境研ほか

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2023年11月15日 AM09:50

妊娠前・中の母の食事と子のぜん息症状の関連、統一見解は得られず

国立環境研究所は11月9日、子どもの1歳から4歳までのぜん鳴の推移パターンによって類型化し、妊娠前からの母親の食事の質と子どものぜん鳴パターンとの関連について解析した結果を発表した。この研究は、同研究所エコチル調査コアセンターの大久保公美JSPS特別研究員(RPD)、中山祥嗣次長ら、・アレルギーセンターの大矢幸弘センター長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Allergy」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、)は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22(2010)年度から全国で約10万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査。さい帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関係を明らかにしている。エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学等に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施している。

これまでの国内外の研究により、妊娠前および妊娠中の母親の食事は、生まれてきた子どものぜん息症状に関連しているのではないかと考えられてきた。しかし、統一した見解は得られておらず、よくわかっていない。その理由の1つとして、ぜん息は症状が多様で、人によって性質が異なるためと考えられている。特に、ぜん鳴は、気管支の炎症や細菌感染等のさまざまな原因で発症するため、ぜん息症状との区別が難しいとされている。

エコチル調査7万530組の母子対象、子のぜん鳴症状推移と妊娠前母の食事の質を解析

そこで今回の研究では、子どもの1歳から4歳までのぜん鳴をその症状の推移パターンによって類型化し、妊娠前からの母親の食事の質と関連があるかを調べた。エコチル調査への参加者で、1歳、2歳、3歳、4歳時における合計4時点のうち、3時点以上のぜん鳴の有無に関するデータを有し、かつ妊娠前の母親の食事やその他解析で使用するデータがそろっている母子7万530組を解析対象とした。保護者の回答による1歳から4歳までのぜん鳴の有無によって、ぜん鳴の推移パターンを類型化。妊娠前からの母親の食事の質の評価には、平成17(2005)年に厚生労働省と農林水産省の共同により策定された食事バランスガイドで示されている目安範囲の下限値をもとに、食事バランススコア(得点が高いほど、食事の質が高い)を算出した。このスコアで対象者を4群に分け、子どものぜん鳴パターンとの関連を調べた。

子1~4歳のぜん鳴は4パターン、持続的に症状示す群が全体の8.2%

研究の結果、1歳から4歳までの間の子どものぜん鳴パターンは4つに大別された。具体的には、ほとんど症状のない「症状なし」群(全体の69.1%)、2歳までは症状がなく、その後急増する「幼少期発症」群(6.2%)、2歳をピークに4歳までに症状が消える「一過性」群(16.5%)、持続的にぜん鳴症状を示す「持続性」群(8.2%)だ。いずれも発作時の症状としては、ぜん息発作との区別は困難で、ゼイゼイ・ヒューヒューという音がするので、数年間経過をみなければどの群に属しているのかはわかりません。

妊娠前の食事の質「高」ほど、子の一過性・持続性群リスク「低」

また、妊娠前の母親の食事の質と子どものぜん鳴パターンとの関連を調べたところ、母親の食事の質が高いほど、「一過性」群と「持続性」群になるリスクが低いことが判明。一方、母親の食事の質と「幼少期発症」群との関連は見られなかった。

以上の結果より、妊娠前から栄養バランスがとれた質の高い食事は、幼少期における子どもの特定のぜん鳴を緩和する可能性が明らかになった。特に、ぜん息の発症を引き起こすリスクの高い「持続性」パターンやぜん息と誤って診断され不必要な治療を受ける可能性のある「一過性」パターンは、質の高い母親の食事によって低減される可能性があることがわかった。

追跡期間延長し、ぜん鳴パターン・母の食事の質の関連を調べる予定

同研究では、ぜん鳴の推移パターンによって類型化したことにより、母親の食事の質が特定のぜん鳴に関連していることが明らかになった。「幼少期発症」群との関連が見られなかった理由の1つとして、2歳以降のぜん鳴が急増していることから、ウイルス性気道感染症など他の要因がより強く関連している可能性が考えられる。なお、今回の研究は1歳から4歳までのぜん鳴の推移パターンを類型化しているが、それ以降の症状の推移パターンは不明だ。そのため、追跡期間を延長してぜん鳴の推移パターンを明らかにするとともに、母親の食事の質との関連を調べていく予定だ、と研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

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