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術中に吸引管を手で持たずに吸引可能、「ハンズフリー吸引チップ」を開発-NCGMほか

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2023年11月06日 AM11:00

手術の時間短縮や効率性向上のための新しい吸引管開発

(NCGM)は11月1日、吸引管を手で持たずに吸引できる「ハンズフリー吸引チップ」(一般名:再使用可能な汎用吸引チップ)を開発したことを発表した。この開発は、ドクタージャパン株式会社と共同で行ったもので、2023年8月に薬事届の提出を完了し、その後の許認可を踏まえ、手術での使用を開始している。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

形成外科のマイクロサージャリーにおいて血管やリンパ管を吻合する際に、術者は顕微鏡を見ながら左手にピンセット、右手に縫合針を持ち吻合を行っている。しかし、術中に吸引が必要になった場合には、顕微鏡から眼を離し、手に持つピンセットや縫合針から吸引管へ持ち替えて吸引操作を実施している。そのため、顕微鏡から眼をそらすことによる集中力の低下や器具を持ち替える手間が課題となっていた。また、手術によっては吸引管を持つ専用の医師がいる場合もあり非効率であることも課題となっていた。

他方、厚生労働省では「医師の働き方改革」の施行を予定しており、医師の勤務体系の見直しが必要となっている。そのため、手術時間の短縮や効率的な手術を行うための新しい吸引管の開発が必要とされていた。

2019年9月に東京都医工連携HUB機構とNCGMが合同開催した臨床ニーズマッチング会で、形成外科の十九浦礼子医師から報告された内容を受け、2者による共同研究開発が進められた。約4年間に渡り多くの議論と試作・改良を経て完成した。

リンパ管吻合術などを想定した開創器式と、皮弁移植などを想定したドロップ式の2種

開発したハンズフリー吸引チップは、切開創を開創しながら吸引を行う「開創器式チップ」と、切開創に落とし込み吸引を行う「ドロップ式チップ」の2種類。これらの吸引チップは症例に応じて選択され、手術室の吸引器に接続している吸引チューブに柔軟性のあるシリコーンチューブを介して接続し吸引を行うものだ。

開創器式チップは、リンパ管吻合術などに使用するもので3本のフックがあることが特徴。この3本のフックを切開創に入れ開創して固定することでハンズフリーを実現する。吸引は中央のパイプで行うものであり、詰まり対策として先端にスリット加工および側面に複数の孔加工が施されている。

ドロップ式チップは、皮弁移植など形成外科での一般的な手術に使用するもので、切開創にチップを落とし込み吸引を行うことでハンズフリーを実現する。開創器式同様に、詰まり対策として先端にスリット加工および孔加工が施されている。

症例の蓄積、他診療科への応用の検討も

開発したハンズフリー吸引チップは、外科の手術において吸引を行う際に吸引管を手で持つことなく吸引操作ができる点が特徴であり、手術時間の短縮などを通じて、医師の働き方改革の実現に貢献できる可能性がある。「今後はNCGMにおいて症例を蓄積して有効性の確認を行うほか、他診療科への応用を進めて行く予定」と、研究グループは述べている。

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