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新型コロナ「感染は自業自得」「政府による行動制限」への意識、5か国比較-阪大ほか

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2023年10月05日 AM10:53

感染症に伴う差別や偏見は世界的な公衆衛生上の課題

大阪大学は9月29日、コロナ禍3年間にわたっての「感染は自業自得」と「政府による行動制限」に対する考え方の国際比較を行い、その結果を発表した。この研究は、同大感染症総合教育研究拠点の村上道夫特任教授(常勤)、三浦麻子教授(大阪大学大学院人間科学研究科)、慶應義塾大学文学部の平石界教授、同志社大学文化情報学部の山縣芽生助教(大阪大学感染症総合教育研究拠点 連携研究員)、広島修道大学健康科学部の中西大輔教授らの研究グループによるもの。研究成果は「PeerJ」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

感染症に伴う差別や偏見は世界的な公衆衛生上の課題だ。歴史上も、さまざまな感染症の流行によって差別や偏見がもたらされており、コロナ禍においても感染した人や特定の職業に対する差別や偏見といった問題が顕在化した。また、感染予防行動をしない人へ私的な取り締まり(いわば「自粛警察」)といった行動も日本を含めるさまざまな国で行われていた。

このような状況下において、研究グループは、2020年春と夏の調査で日本の自業自得感が他国よりも高いことを報告してきた。また、日本では自業自得感と行動制限意識が強く関連することを示していた。しかし、これまで、自業自得感や行動制限意識の経年変化や両者の関係性について詳しくは検討されていなかった。

日、米、英、イタリア、中国で3か年アンケート調査

研究グループは今回、日本、米国、英国、イタリア、中国における自業自得感と行動制限意識の経年変化及びその両者の関係性を明らかにするために、2020年に加えて2021年、2022年の春に実施したアンケート調査データも対象とした解析を行った。アンケート調査は、5か国の18歳以上の市民を対象に、2020年~2022年春に、オンラインで実施した。すべてに回答した人数は、日本から順に99人、71人、138人、51人、9人、少なくとも1回は回答した人数は、同じく775人、921人、761人、969人、1,299人だった。

自業自得感については、「新型コロナウイルスに感染した人がいたとしたら、それは本人のせいだと思う」「新型コロナウイルスに感染する人は、自業自得だと思う」の2項目に、「1:まったくそう思わない、2:あまりそう思わない、3:どちらかといえばそう思わない、4:どちらかといえばそう思う、5:ややそう思う、6:非常にそう思う」から1つを選択することを求めた。

行動制限意識については、「非常時には、政府からの移動の自由を制限する要請に応えるのが良い」「非常時には、政府からの言論の自由を制限する要請に応えるのが良い」「非常時には、政府の外出制限方針に反して外出した人は法律によって罰されるべきである」「非常時には、政府の方針に反する言論は法律によって罰されるべきである」「非常時には、他の人たちが政府の方針に従っているか、一人ひとりが見張るべきである」「非常時には、他の人たちを政府の方針に従わせるために、個々人の判断で行動を起こして良い」の6項目に、いずれも「1:全く違うと思う、2:おおよそ違うと思う、3:少し違うと思う、4:どちらともいえない、5:少しそう思う、6:まあまあそう思う、7:強くそう思う」から1つを選択することを求めた。

自業自得感、行動制限意識、その関連は国によって異なる

その結果、自業自得感は日本で高く、英国で低い傾向があることがわかった。また、中国を除いた4か国では、2020年から2021年にかけて自業自得感が増加していた。行動制限意識は中国が高く、日本が低かった。日本では、2020年から2021年にかけて、米国、英国、イタリアでは、2020年から2022年にかけて行動制限意識が低下していた。

行動制限意識が高い人の自業自得感は強まる

自業自得感と行動制限意識に正の関係が見られた日本とイタリアを対象に両者の因果関係を分析したところ、自業自得感が低い人の行動制限意識は徐々に弱まった一方で、行動制限意識が高い人の自業自得感は強まったという結果が共通して示された。

このことから、日本では、感染症が流行した際に差別や偏見を軽減するためには、感染流行初期に、「感染は感染者自身のせいではない」という啓発を、行動制限意識が高い人に対して行うことが重要だと考えられた。

国ごとにアプローチを検討することが重要

今回の研究により、感染症に関する差別や偏見について、国ごとや経年的な変化に関する特徴が明らかになった。自業自得感、行動制限意識、およびその関連は国によって違いがあり、国ごとに差別、偏見を軽減するアプローチを検討することが重要だ。一方、研究結果の留意事項として、「国による自業自得感の違いは規範や処罰の厳しさを、行動規制意識の違いは感染予防行動に対する国の法的措置のあり方を反映している可能性があり、その機序の決定的な特定までは至っていない」、と研究グループは述べている。

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