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悪性黒色腫、新たな治療標的として「GREB1 Is4」を同定-阪大

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2023年09月13日 AM10:05

、薬剤耐性の腫瘍出現が問題に

大阪大学は9月7日、悪性黒色腫における新規のがんシグナル軸ならびに治療のための分子標的を発見したと発表した。この研究は、同大感染症総合教育研究拠点の菊池章特任教授と同大大学院医学系研究科分子病態生化学の新澤康英助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Oncogene」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

悪性黒色腫は、色素細胞メラノサイトががん化して発生する悪性腫瘍だ。奏効率が高い薬剤が開発されているが、薬剤耐性の腫瘍の出現が問題となっている。悪性黒色腫の約30%は色素を有する黒子(ほくろ)から発生し、その発症の仕組みは十分に解明されていない。

研究グループは、メラノサイトの色素を作る色素細胞特異的転写因子MITFの下流で発現するGREB1アイソフォーム4(Is4)遺伝子に着目。がん化における新たなシグナル軸と新規治療標的としての可能性について、解析した。

予後不良の悪性黒色腫、MITF・GREB1発現「高」

研究の結果、悪性黒色腫において、GREB1の一部であるGREB1 Is4が特異的に発現しており、その発現がMITF転写因子によって誘導されることを見出した。また、良性母斑(黒子)や悪性黒色腫の組織では、MITFとGREB1が共発現しており、予後不良の悪性黒色腫でMITFおよびGREB1の発現が高いことを明らかにした。

GREB1 Is4、ピリミジン合成効率上昇でがん細胞増殖を促進

続いて、悪性黒色腫モデルマウスにGREB Is4を発現させると、腫瘍の発生を促進することを明らかにした。GREB1 Is4が核酸の一種であるピリミジン合成の律速酵素の活性化を促進し、悪性黒色腫細胞の増殖を促進することが判明。悪性黒色腫モデルマウスに対して、GREB1のアンチセンス核酸が、腫瘍サイズを縮小させることが明らかになった。

GREB1に対するアンチセンス核酸、新たな治療薬として期待

免疫チェックポイント阻害剤の登場により、悪性黒色腫の治療が進歩している一方で、いまだ治療困難な症例が存在することも知られている。今回、研究グループはIs4を介した悪性黒色腫の新たながん化の仕組みを明らかにし、そのGREB1 Is4は新たな治療標的となる可能性を示した。

がん細胞は無秩序に増殖を繰り返すことが特徴であり、薬剤を用いて核酸の合成を阻害し、細胞の増殖を抑える化学療法が行われてきた。今回、GREB1 Is4がその核酸の合成を促進し、色素細胞のがん化を誘導することが判明したことにより、GREB1 Is4が、悪性黒色腫の増殖を促進する有力なタンパク質であることを明らかにした。さらに、GREB1が、悪性黒色腫における治療標的となることを示し、今後、GREB1に対するアンチセンス核酸が新たな治療薬となることが期待され、本研究成果は社会的な意義が大きいと考えられる、と研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

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