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アルツハイマー病のタウ病変を早期発見、高感度のPETトレーサー開発-東北大ほか

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2023年07月07日 AM11:16

アルツハイマー病におけるタウPET検査、検出感度や精度に課題

東北大学は7月6日、アルツハイマー病患者のタウタンパク質の高感度、高精度検出が期待される新規PETトレーサーの候補化合物として、[18F]SNFT-1の開発に成功したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科機能薬理学分野の原田龍一助教、東北医科薬科大学医学部薬理学教室の岡村信行教授、東北大学サイクロトロンRIセンターの古本祥三教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Nuclear Medicine」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

アルツハイマー病は、アミロイドβタンパク質とタウタンパク質の脳内蓄積、およびそれに続発する神経細胞死を特徴とする認知症の最大の原因疾患である。このようなアルツハイマー病の脳内病理は、認知症を発症する前から潜行性に進むことが知られている。したがって、通常アルツハイマー病の臨床診断が下されるのは、既に脳内病変がある程度進行してしまった後である。近年、アミロイドβタンパク質を標的とした疾患修飾薬が開発され、アルツハイマー病の根治への期待が高まっている。(ポジトロン断層法)を用いてアミロイドの脳内蓄積を計測するアミロイドPET検査は、抗アミロイド薬の治療適応や効果判定する上で今や欠かせない検査となっている。また近年、タウタンパク質を画像化するタウPETも実用化され、タウタンパク質を標的とした認知症治療薬開発も進められている。タウPET検査では、タウタンパク質以外にトレーサーが誤って結合してしまう「オフターゲット結合」が存在することや、初期のタウ病変に対する検出感度がそれほど高くないことが課題として指摘され、より高性能なタウPETトレーサーの開発が望まれていた。

新規タウPETトレーサー開発、オフターゲットなく選択性が高い

研究グループは、アルツハイマー病の脳内に蓄積したタウタンパク質の検出性能を向上させた新規タウPETトレーサーの有力候補化合物SNFT-1(Sendai Neuro Fibrillary-tangle Tracerの頭文字から命名)の開発に成功した。SNFT-1は、過去のPETトレーサー開発の経験に基づいて、元となった化合物(THK5351)の化学構造の改変を少しずつ繰り返すことによって新たに創製した低分子化合物である。この[18F]SNFT-1はアルツハイマー病患者の脳内で蓄積するタウタンパク質凝集物のみに結合し、オフターゲット結合の標的として知られるモノアミン酸化酵素B(MAO-B)には結合しない。またアミロイドβ線維などタウタンパク質以外の凝集物にも結合せず、アルツハイマー病のタウ病変に対する選択性が高いことが確認された。

初期のアルツハイマー病、ブラークステージ軽度の脳標本でも明瞭にタウを検出

[18F]SNFT-1の病変検出感度について詳しく調べるため、認知症症状がないにもかかわらず、初期のアルツハイマー病の病理所見を示した高齢者の死後の脳病理組織標本を用いて評価を行った。その結果、タウ病理の重症度としてはごく軽度に相当するブラークステージIIの脳標本でも、[18F]SNFT-1はタウ病変を明瞭に描出した。また他のタウPETトレーサーと比べて、[18F]SNFT-1はタウ結合部位におけるシグナル強度が最も高く、従来型トレーサーよりも優れた感度でタウを検出できる可能性が示唆された。さらに[18F]SNFT-1は、正常マウスに対して静脈内投与した際に、高い脳内取り込みと急速なウォッシュアウトを示したことから、PETトレーサーとして優れた性能を発揮するものと期待される。

臨床研究で検査性能を評価予定

「現在、タウタンパク質を標的とした治療薬の開発が進められており、タウ病変が脳内で形成されている人を早期発見することが今後重要になる。[18F]SNFT-1は従来型のタウPETトレーサーが苦手としてきた初期タウ病理の計測で高性能を発揮することが期待される。これから東北大学病院での実施が計画されている臨床研究で、[18F]SNFT-1の検査性能が評価される予定である」と、研究グループは述べている。

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