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遺伝性網膜ジストロフィーの遺伝子治療薬「ルクスターナ」承認-ノバルティス

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2023年06月28日 AM11:19

・レーベル先天黒内障など、遺伝性・進行性の眼疾患

ノバルティス ファーマ株式会社は6月26日、「ルクスターナ(R)注」(一般名:ボレチゲン ネパルボベク)について、両アレル性RPE65遺伝子変異による遺伝性網膜ジストロフィー(以下、IRD)に対する初めての遺伝子治療用ベクター(ウイルスベクター製品)として製造販売承認を取得したと発表した。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

IRDは、遺伝子の変異が原因で、網膜の機能が障害される遺伝性・進行性の眼疾患の総称。そのうちの代表的な疾患の一つである網膜色素変性症では、発症時期はさまざまだが、一般的に10歳前後で発症し、夜盲や視野狭窄が現れ、進行とともに視力が低下する。また、レーベル先天黒内障では、生後2~3か月で症状が発現し、多くは6か月以内に視力が著しく低下し、まぶしく感じる羞明や眼球が揺れ動く眼振などの症状が見られ、その多くは、若年成人期までに失明に至るとされている。

RPE65遺伝子の機能欠損を補う遺伝子補充療法、長期間にわたる視機能維持が期待される

IRDの原因遺伝子の1つであるRPE65遺伝子変異を有する場合、RPE65タンパク質を作ることができず不足し、正常な視覚に必要な視覚サイクルを回すことができず視覚障害が生じる。今回承認されたルクスターナは、RPE65遺伝子の機能欠損を補う遺伝子補充療法。両アレル性RPE65遺伝子変異による遺伝性網膜ジストロフィーと診断された、視覚障害があり、十分な生存網膜細胞がある成人および小児の患者に対する治療を目的に開発された、眼科疾患で初めての遺伝子治療用ベクターだ。各眼につき網膜下への1回の注射により、正常なRPE65遺伝子を組み込んだ病原性のないアデノ随伴ウイルス2型(AAV2)により、正常RPE65遺伝子が網膜色素上皮に導入され、RPEタンパク質が長期間安定して発現。このことにより、同疾患の患者の視覚サイクルが正常に機能するようになり、長期間にわたって視機能が維持されることが期待されている。

同製品は両アレル性RPE65遺伝子変異によるIRD患者に対するウイルスベクター製品として米国Spark Therapeutics社(Roche社傘下)が開発した遺伝子治療用ベクター。米国およびEUで、それぞれ2017年12月、2018年11月に承認されている。なお、ノバルティスは、米国外のすべての国で開発、承認申請および販売に関する独占権を保有する。国内では、2020年3月19日希少疾病用再生医療等製品に指定された。

日本人患者対象P3試験で、光感受性を改善

今回の承認は、両アレル性RPE65遺伝子変異による遺伝性網膜ジストロフィーを対象に実施した、海外第1相試験(101試験、102試験)海外第3相試験(301試験)、国内第3相試験(A11301試験:日本人4人)の計4試験の結果に基づくものだ。

301試験(両アレル性RPE65遺伝子変異による遺伝性網膜ジストロフィーの成人および小児患者を対象とした海外第3相試験)においては、介入群21例の両眼に同製品を単回網膜下投与したところ、1年間無治療で経過観察した対照群10例と比較し、同製品投与1年目の時点でのMLMTスコア(主要評価項目、患者が異なる照度レベルの環境下で、決められたコースを正確かつ妥当な速度で移動できる能力を評価するテスト)の平均変化量が介入群で1.8(±1.1)、対照群で0.2(±1.0)であり、同製品投与群で統計学的に有意な改善が見られ(p=0.001、permutation test)機能的視力の改善が示された。

A11301試験(両アレル性RPE65遺伝子変異によるIRDを対象とした国内第3相試験)においては、日本人患者4例の両眼に同製品を単回網膜下投与したところ、同製品投与1年後のベースラインからのFST(主要評価項目、患者の異なる輝度レベルへの知覚を測定することで、網膜全体の光感度を評価するテスト)の平均変化量(範囲)は−1.831(−3.54~−0.56)であり、ベースラインに比べ光感受性の改善が見られた。

また、臨床試験(101試験、102試験、301試験、A11301試験)において同製品が投与された45例(日本人4例を含む)のうち、重大な副作用として眼内炎(頻度不明)、眼の炎症(6.7%)、網膜異常(28.9%)、眼圧上昇(13.3%)、白内障(24.4%)が報告されている。

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