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誤情報がオンライン発信されると、その後の訂正は十分伝わらない可能性-名大ほか

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2023年05月11日 AM11:00

訂正記事が配信されても誤情報が拡散され続けるのはなぜか

名古屋大学は5月9日、誤情報に対する訂正の効果を制限するオンライン行動の特徴を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院情報学研究科の久木田水生准教授、名古屋工業大学大学院工学研究科の田中優子准教授、東京学芸大学の犬塚美輪准教授、理化学研究所革新知能統合研究センターの荒井ひろみユニットリーダー、東北大学大学院情報科学研究科の乾健太郎教授(理化学研究所革新知能統合研究センターチームリーダー)、髙橋容市特任研究員の研究グループによるもの。研究成果は、「Proceedings of the 2023 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

誤情報は人間の行動に悪影響を及ぼすため、情報社会で重要な課題である。誤情報を拡散する人は、それが正しいと信じていることから共有しようとする傾向がある。そのため、ファクトチェックの取り組みを通して、人々の誤った信念を訂正することは有効な誤情報対策につながる。ファクトチェックの取り組みは世界中で広がっているにもかかわらず、その効果を限定する人の心理行動傾向がある。それは「確証バイアス」であり、信じていることに合致した情報を探索し、それと合致しない情報を無視したり、その情報の重要性を低く見積もる心理傾向を意味する。

現在、多くのファクトチェック記事がオンライン経由でアクセスされており、ファクトチェック記事を共有するには、誤情報を信じている人がその記事をクリックする必要がある。今回の研究では、このクリック行動に着目し、「信じている誤情報に対する訂正記事のクリックを選択的に避けるということはあるのか?」、もしあるとすれば「選択的に避ける傾向の強い人はどのような特徴があるのか?」という問いについて検証した。

「信じている誤情報に対する訂正記事」へのクリックを「選択的に避ける傾向」43%

研究グループが独自に考案したクリック行動分析指標(Fact Avoidance/Exposure Index;FAEI)を用いて実験を行った。この指標は、数理基準とクリック行動を比較することによって、信じている誤情報に対する訂正記事をクリックする傾向が低い群(Fact-Avoidance Group)と高い群(Fact-Exposure Group)に参加者を分類するものである。

その結果、参加者は「信じている誤情報に対する訂正記事」を選択的にクリックするグループ(57%)と、選択的に避けるグループ(43%)に分かれた。前者は「信じている誤情報に対する訂正記事」の42%をクリックするのに対し、後者は7%しかクリックしなかった。このことは、後者が持つ誤った信念の93%は訂正される機会を逃していることを意味する。

訂正情報は「アクセス可能」なだけでなく「届ける」対策が必要

研究結果は、ファクトチェックなどの取り組みによって誤情報に対する訂正が行われているにもかかわらず、なぜ誤情報が拡散され続けるのか、という問いに対し、新たな見方を提供する。すなわち、「訂正情報をアクセス可能な状態にすること」と「誤情報を信じている人にそれを届けること」の間にはギャップがあり、少なくない割合の人がそのギャップを超えていないという可能性である。訂正情報の効果を発揮させるためにはこの2つをつなぐ社会的・技術的しくみが必要である。

選択的クリック回避行動が起こるメカニズムを心理学・認知科学・情報科学の観点から検討

このクリック行動の選択的回避については、これまでほとんど研究がされておらず、学術的知見が不足している。なぜこのような選択的クリック回避行動が起こるのか、そのメカニズムについて、・認知科学・情報科学の観点から検討していく。「これらの知見を、訂正情報をより広く共有する情報伝達方法を考案することに役立てることは、社会に蔓延する誤情報の対策への貢献につながる」と、研究グループは述べている。

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