医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 院内がん登録2021年全国集計公表、2018~2019年平均登録数比101.1%-国がん

院内がん登録2021年全国集計公表、2018~2019年平均登録数比101.1%-国がん

読了時間:約 3分11秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2023年02月15日 AM11:19

通常集計に加え、2021年のがん診療状況に関する特別集計も実施

国立がん研究センターは2月14日、、小児がん拠点病院、都道府県推薦病院、任意参加病院の870施設より、2021年1月1日~12月31日の1年間にがんと診断または治療された患者の院内がん登録データを収集し集計、報告書にまとめ、ウェブサイトで公表した。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

今回はがん診療連携拠点病院等の院内がん登録実施施設、計870施設の通常集計と併せて、2018~2021年に院内がん登録データの提出があった院内がん登録実施施設のうち、過去4年間を通してデータ提出のあった計786施設を対象に、2021年におけるがん診療の状況について特別集計を行い分析した。

全国集計の対象は、2022年6月時点のがん診療連携拠点病院(以下、拠点病院)453施設、小児がん拠点病院(以下、小児拠点)6施設、都道府県推薦病院(以下、推薦病院)371施設、任意参加を希望した病院(任意病院)74施設、計870施設において、2021年1月1日~12月31日までの1年間にがんと診断または治療された109万9,864症例である。特別集計の対象は、全国集計対象施設のうち、2018~2021年の4年間を通して院内がん登録データの提出があった拠点病院449施設、小児拠点6施設、推薦病院・任意病院331施設の計786施設414万8,502症例である。なお、「2021年全国集計速報値」では、拠点病院449施設、小児拠点6施設の計455施設80万6,589症例を集計対象とした。

対象部位は、胃がん、大腸がん(結腸がん、直腸がん)、肝がん(肝細胞がん、肝内胆管がん)、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん)、、食道がん(扁平上皮がん、腺がん)、(膵高分化型神経内分泌腫瘍)、前立腺がん、子宮頸がん、子宮体がん(子宮肉腫)、膀胱がん、甲状腺がん(乳頭・濾胞がん、未分化がん、髄様がん)、胆嚢がん、喉頭がん、腎がん、腎盂・尿路がん、卵巣がんの計17部位である。

男女ともに肝臓がんはほぼ横ばい、一方で前立腺がん・乳がんが増加傾向

2009~2021年までの院内がん登録数の推移を5部位(胃、大腸、肝臓、肺、前立腺または乳房)、男女別にみると、2021年症例は男女ともに肝臓がんはほぼ横ばいであるのに対し、男性では前立腺がん、女性では乳がんが増加傾向だった。部位ごとに、男女比、年齢分布、UICC TNM分類ステージ別登録数の割合、UICC TNM分類ステージ別治療方法の割合とその経年傾向等を集計、分析した結果、ほとんどの部位で2020年よりも登録数は増えているが、2019年と比較して極端な増加はみられなかった。

コロナ新規患者数増加とがん新規登録数減少、2021年8月以降は同時期に認められず

2021年症例の院内がん登録数を、2018~2019年2か年平均登録数と比較したところ、2020年症例は96.1%と登録数の減少がみられたが、2021年症例は101.1%と2か年平均登録数と同程度であった。

診断月別の登録数を見ると、2020年4月~5月、2020年7月~8月、2021年5月と7月に登録数が減少していた。初回の緊急事態宣言は登録数の減少と関係が予測されるが、その後は必ずしも緊急事態宣言の発出中に登録数が減少してはいない。また、新型コロナウイルスの新規患者数増加と新規がん登録数減少は同時期に生じているようにもみえるが、2021年8月以降にそのような減少は認められなかった。新規がん登録数の減少は単一の原因ではなく、その時期によってさまざまな原因が複合し影響していたと考えられる、としている。

検診発見例は2018~2019年比で98.7%、非検診発見例は102.0%

全がんの自施設初回治療開始例を対象として、発見経緯別に検診発見例と非検診発見例月別登録数の推移を2018~2021年診断例について集計した。2018~2019年2か年平均登録数と比較して、検診発見例では2020年は11万7,714件で86.7%(1万8,003件減)、2021年は13万3,404件で98.7%(1,713件減)であった。一方、非検診発見例では2020年は67万5,040件で97.8%(1万5,248件減)、2021年は70万4,277件で102.0%(1万3,989件増)であった。

外科的・鏡視下治療97.9%、内視鏡的治療は97.4%、2019年比で

治療月別治療方法登録数の推移を2019年の年間登録数と比較すると、2021年診断例通年では、外科的・鏡視下治療は41万1,225件で97.9%(8,729件減)、内視鏡的治療は12万2,355件で97.4%(3,209件減)、放射線治療は9万6,639件で101.7%(1,621件増)、化学療法は25万5,492件で101.1%(2,800件増)、内分泌療法は8万5,341件で102.3%(1,892件増)であった。

「2020年は前年と比較し院内がん登録数が減少したが、2021年にその減少分が増加したと考えることは難しく、2022年以降も継続的に分析を行う必要がある」としている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 肝線維化の治療薬候補を同定、iPS細胞から誘導の肝星細胞で-東大ほか
  • 「ストレス造血時」における造血幹細胞の代謝調節を解明-東北大ほか
  • 食道扁平上皮がんで高頻度のNRF2変異、がん化促進の仕組みを解明-東北大ほか
  • 熱中症搬送者、2040年には日本の都市圏で2倍増の可能性-名工大ほか
  • 日本人がアフターコロナでもマスク着用を続けるのは「自分がしたいから」-阪大ほか