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「確定診断に20~30年かかるケースも」-ポルフィリン症で堀江氏が講演

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2021年10月18日 PM01:00

腹痛に加えて末梢神経系、中枢神経系、自律神経系などで多彩な症状

ポルフィリン症の診断や治療に長年携わってきた堀江裕氏(済⽣会江津総合病院名誉院長)は9月17日、製薬会社のアルナイラムジャパンが開催したセミナーで講演した。セミナーは同社による急性肝性ポルフィリン症()治療薬「」(一般名:)の発売を記念して開かれたもの。

ポルフィリン症は、ヘムの⽣合成経路に関与する酵素異常により中間代謝物が過剰に産⽣されるまれな遺伝性代謝疾患。ヘムとはヘモグロビンやミオグロビンなどの材料となる物質で、酸素の運搬や薬物代謝などに関わっており、肝臓と骨髄で合成される。
ポルフィリン症は、中間代謝物の過剰な産⽣が肝細胞内で起こるものを「肝性」、赤芽球内で起こるものを「骨髄性」と分類する。また腹痛や運動麻痺といった急性の神経症状がある急性と光線過敏症など皮膚の症状を主体とする皮膚型で分けられ、9つの病型がある。

このうち4つの病型を含むAHPは、男性に比べ女性の発症頻度が高く、20~30代での発症が多い1)。腹痛に加えて、末梢神経系(四肢痛、背部痛、筋力低下)や中枢神経系(不安、幻覚・妄想、行動の変化)、自律神経系(嘔吐、便秘)、皮膚(日光露出部の皮膚障害)といった多彩な症状がみられることから堀江氏は「神経内科や精神科、消化器科、皮膚科などさまざまな専門科を渡り歩き、なかなか診断がつかない」と問題視。「発症後20~30年経ってから診断がつく例もある」と話した。

その上で堀江氏はポルフィリン症の疫学調査の結果1)を示し、AHPでは急性腹症、イレウス、虫垂炎、ヒステリー・心因性反応などの初期診断が下されているケースが少なくないことを紹介した。堀江氏は、「精神疾患と診断し、精神安定剤などを投与する場合があるが、この中にはポルフィリン症の誘発因子となる薬もある」と指摘。「医療行為で悪化させてしまう可能性のある病気だ」と危惧した。そのほか、過度な食事制限、飲酒、喫煙、ストレス、月経などによるホルモン変化も誘発因子だとした。

ALAS1をターゲットに治療薬が開発

急性肝性ポルフィリン症の治療では、急性発作症状を改善するためのヘミン投与やグルコース投与、また痛みや嘔吐といったさまざまな症状への対症療法が行われてきた。ギブラーリはAHP患者で発現が亢進するアミノレブリン酸合成酵素1(ALAS1)を標的とするRNA干渉治療薬で、ALAS1のメッセンジャーRNAを特異的に低下させることで、AHPの急性発作や、症状の発現に関わる神経毒性を減少させる。アルナイラムジャパンは8月より同薬の発売を開始した。

新薬の登場について堀江氏は「これまで遺伝性疾患の治療はないというのが定説だった。画期的で希望のある薬だ」と期待を示した。

1)近藤雅雄, ⽮野雄三, 浦⽥郡平. ALA-Porphyrin Science. 2012;1(2):73-82.

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