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低ホスファターゼ症、小児へ高純度間葉系幹細胞移植のP1/2a試験開始-島根大病院ほか

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2021年07月19日 AM10:45

高純度間葉系幹細胞製剤(REC-01)移植の安全性、有効性を評価

島根大学医学部附属病院は7月15日、難病の低ホスファターゼ症小児患者を対象に、骨分化能が高い高純度間葉系幹細胞製剤(REC-01)を移植する新規治療法について安全性、有効性を評価する医師主導治験を開始すると発表した。この研究は、同大医学部小児科の竹谷健教授らを責任医師とする研究グループによるもの。


画像はリリースより

低ホスファターゼ症は、生まれつき骨の形成に必要な酵素アルカリホスファターゼが少ないため、石灰化障害による骨の湾曲、易骨折性、歯の脱落等が生じ、けいれんや難聴、発達遅滞といった中枢神経症状が生じる。特に、肋骨をはじめとする胸郭の低形成による呼吸障害がある場合、生命予後が不良で、最も重症な周産期に発症する患者の死亡率はほぼ100%とされている。国内患者数は100~200人とされ、国から難病指定を受けている。

現在、骨の石灰化を改善させる酵素補充療法があるが、生涯に渡って定期的に投与する(週1~3回皮下注射)必要があること、酵素に対する抗体が産生されて効果が減弱すること、脳血液関門を通らないため中枢神経系症状は改善しないこと、医療費が高額であること(最低でも年間2000万円以上)などの課題がある。このため、骨形成をはじめとする症状改善効果が高く、効果が持続する治療方法(根治療法)が必要とされている。

アルカリホスファターゼ産生・骨分化確認で、First in Human試験へ

今回の治験責任医師となる竹谷教授らは、文部科学省・再生医療の実現化プロジェクト(2008~2012年度)および厚生労働省・厚生労働科学研究費補助金(再生医療実用化研究事業)(2011~2013年)の支援を得て、低ホスファターゼ症に対するヒト幹細胞を用いた臨床研究を実施。間葉系幹細胞の移植により、世界で初めて全身骨の再生に成功し、救命した。しかし、同臨床研究で実施された症例では、骨構造が正常レベルに達するまでの改善には至らなかったという。

一方、島根大学医学部生命科学講座の松崎有未教授らは、ヒト骨髄液から、極めて純度の高い間葉系幹細胞を分離する技術を開発。同技術で選別された増殖能・分化能の高い高純度間葉系幹細胞(REC)を骨形成不全に適用することを目指し、同大学発バイオベンチャーPuREC株式会社を設立した。

竹谷教授は、このRECを使用して、改めて低ホスファターゼ症を治療することを企図。2017年よりAMEDの「橋渡し研究戦略的推進プログラム・シーズB」の助成を受けて非臨床研究を進め、安全性の確認を行うと同時に、RECの生体内での生着による骨の形成に必要な酵素(アルカリホスファターゼ)の産生、骨分化を確認し、同治験の有効性の示唆を得た。この結果を受け、今回島根大学医学部附属病院は、REC-01移植の安全性および有効性を評価するための医師主導治験を実施する。

今回は、第1/2a相試験(First in Human試験)、非盲検・非対照試験で、REC-01の安全性、生着率、全身骨の成長状況、ならびにバイオマーカーの検討を目的としている。計画症例数は3例で、登録期間は2021年7月~2022年9月(但し、3例目の投与確定まで)としている。

同治験はAMEDの「再生医療実用化研究事業」の支援の下、岡山大学新医療研究開発センターの協力により実施され、治験で用いるREC-01は、PuREC株式会社と株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングから提供される。

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