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新型コロナ第1~4波変異ウイルス中和抗体価、解析結果を発表-神戸大ほか

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2021年07月14日 PM12:00

日本の第1~4波のさまざまな重症度COVID-19患者血清を用いて

神戸大学は7月13日、新型コロナウイルス第1~4波における感染者の変異ウイルスに対する中和抗体価の詳細な解析結果を発表した。この研究は、同大大学院医学研究科附属感染症センター臨床ウイルス学分野の森康子教授らの研究グループと、兵庫県立加古川医療センターとの共同研究グループによるもの。研究成果は、「medRxiv」に掲載されている。


画像はリリースより

新型コロナウイルス感染症()を引き起こす新型コロナウイルス()は感染性が高く、世界中に広がっている。さらに、現在、英国型(アルファ株)、南アフリカ型(ベータ株)、ブラジル型(ガンマ株)をはじめとした複数の変異型が流行しており、国内でも報告されている。研究グループは、新型コロナウイルスは重症度の高い人ほど中和抗体価も高いことを報告しているが、新たに出現した変異型に対する具体的な中和抗体価については明らかではない。

今回の研究では、日本の第1~4波におけるさまざまな重症度のCOVID-19患者の血清を用いて変異型(生ウイルス)に対する中和抗体価を詳細に解析した。

解析した患者全てで、従来型とアルファ株で同程度の中和抗体価

兵庫県立加古川医療センターを受診したCOVID-19患者の検体を用いて、研究を実施した。第1波(2020年3~6月)18人、第2波(2020年7~10月)20人、第3波(2020年10月~2021年2月)23人、第4波(2020年3月~)20人の新型コロナウイルス患者を選択し、計81人の患者血清を解析。また、患者の重症度によって無症状~軽症(26人)、中等症~重症(19人)、超重症(37人)のグループに分類して解析を行った。その結果、解析した患者全てで、従来型とアルファ株で同程度の中和抗体価を認めた。

また、ガンマ株は99%(81人中80人)、ベータ株は96%(81人中78人)とほぼ全ての患者が中和抗体を持っていた。一方で、この2つの変異型(特にベータ株)はアルファ株に比べて中和活性が低い(中和しにくい)ことが明らかになった。

第4波、英国型への中和抗体価が従来型を含めた他のどの変異型よりも高い結果に

第1~4波の検討では、第1~3波にかけては上記と同様の傾向を示した。しかし、第4波においては英国型に対する中和抗体価が従来型を含めた他のどの変異型よりも高い結果だったという。これは第4波がアルファ株を中心に発生していること、またその感染者ではアルファ株に対して最も強い中和抗体が産生され、他の変異型に対してもやはり同様に有効であることを示唆している。

重症度別では、これまでの報告と同じく無症状者・軽症のグループではどの変異型に対しても抗体価は低い傾向であったものの、ほとんど全ての患者が全ての変異型に対して中和抗体を持っていた。

COVID-19回復者は他の変異型への再感染・重症化リスクも低い可能性

この研究は、新型コロナウイルス変異型(生ウイルス)に対するCOVID-19既感染者の中和抗体価を詳細に解析したもの。従来型あるいはアルファ株に感染した患者はほとんどがアルファ株、ガンマ株、ベータ株に対しても中和抗体を持っていたことから、COVID-19回復者は他の変異型への再感染あるいは重症化リスクも低い可能性が示唆される。しかし現在、中和抗体価がどれくらいあると再感染が防げるか、重症化を抑えることができるのか、に関する直接的なデータはなく、今後追跡していく必要があるとしている。

また、第4波の英国型に感染したと思われる患者グループでは、アルファ株以外、特にベータ株には抗体価が低い(中和されにくい)ことも明らかになった。変異型への再感染のリスクをさらに正確に評価するために、今後はCOVID-19に対する中和抗体以外の免疫応答、例えば免疫記憶(再感染した際に即座に抗体を産生するよう働きかけることのできるリンパ球)の持続や細胞性免疫などに関しても詳細に解析することが必要であると考える、と研究グループは述べている。

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