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肝がん、発症・転移に関わる血液マーカーLG2mを同定-金沢大ほか

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2021年04月13日 AM11:30

LG2m上昇、肝炎や肝がん患者の診断や経過にどのような影響?

金沢大学は4月9日、肝がん発症の危険、転移の危険に関わる血液成分(血液マーカー)の同定に成功したと発表した。この研究は、同大附属病院総合診療部の山下太郎准教授および医薬保健研究域医学系の金子周一教授、東京工業大学生命理工学院の越川直彦教授(東京大学医科学研究所人癌病因遺伝子分野客員教授)、東京大学の清木元治名誉教授、アボットジャパン合同会社総合研究所の吉村徹所長らの研究グループによるもの。研究成果は、米国医学誌「Hepatology」にAccepted Articleとして掲載されている。


画像はリリースより

肝がんは膵がんに次ぐ高悪性度がんとして知られ、C型肝炎ウイルスなどの肝炎ウイルス感染が肝がんの危険因子として知られている。基礎研究、創薬研究の成果により、C型肝炎は治療によりウイルスが消失する病気となった。しかし、C型肝炎治癒後も肝がんを発症する危険が完全に消えるわけではなく、このような患者で肝がんを早期に診断する技術の開発が求められている。

さらに、高悪性度肝がんの特徴として肺や骨など他臓器に転移する能力(遠隔転移能力)があるが、これまで転移を起こす前の段階でがんの遠隔転移能力を見出す方法はなかった。

研究グループは、これまでに上皮細胞の接着や生存に関わる生体膜(基底膜)の主要成分であるラミニンの中でがん特異的に発現するラミニンγ2単鎖(LG2m)に注目し、血液検査で微量のLG2mを再現性よく測定できる、アボット社アーキテクト測定装置を用いた検査薬の基礎研究、開発研究を行ってきた。今回の研究では血液中の微量LG2mの上昇が肝炎、肝がん患者の診断やその後の経過にどのような影響があるのか、基礎的、探索的、検証的研究を行った。

LG2m、「AFP」「PIVKA-II」とは相関のない新規マーカー

がんには発生、増殖、転移、治療抵抗性などに関わるがん幹細胞の存在が知られている。研究グループはこれまでの肝がん幹細胞研究から、肝がんには局所で増殖する上皮系がん幹細胞(EpCAM陽性)と遠隔転移を制御する間葉系がん幹細胞(CD90陽性)の2種類が存在することを見出してきた。

肝がんでは、現在アルファ・フェトプロテイン(AFP)、ピブカ・ツー(PIVKA-II)の2つの腫瘍マーカーの測定が行われているが、これらはいずれもEpCAM陽性細胞で発現しており、CD90陽性細胞での発現は認められない。

今回、14種類の肝がん細胞を用いてLG2mの測定を行ったところ、LG2mはAFP、PIVKA-IIが発現していないCD90陽性細胞でも上昇していること、肝がん患者血清を用いた測定データからAFP、PIVKA-IIとは相関のない新しいマーカーであることがわかった。

肝がん診断時に血清LG2mが60pg/ml以上の患者、治療後に遠隔転移が高率

これまでの研究からCD90陽性細胞の存在は、肝がん治療後に遠隔転移を起こす危険が高いと考えられている。そのため、研究グループは肝がん診断時の血清LG2mと治療後の遠隔転移の関係について解析。肝がん診断時に血清LG2mが高値(60pg/ml以上)の患者では、治療後に高率に遠隔転移を引き起こし予後が悪いことが2つの独立した後ろ向きコホート(コホート1:治療として外科切除、もしくはラジオ波焼灼療法を受けた肝がん患者47例、コホート2:コホート1とは独立した、治療として外科切除、もしくはラジオ波焼灼療法を受けた肝がん患者81例)の解析で明らかになった。

現在用いられているAFP、PIVKA-IIではこのような傾向が全く認められないことから、血清LG2mの測定は遠隔転移能力の高い細胞集団を反映する、新たな肝がんマーカーである可能性が示唆された。

これまでにがん遠隔転移能力を反映する腫瘍マーカーが存在しないことから、今回の研究成果は世界で初めてのがん遠隔転移マーカーの開発につながる可能性が期待されるという。

血清LG2m上昇患者、正常な患者に比べ、経過で肝がん発症リスク約20倍高

研究グループは、画像的に肝がんがないと診断されたC型慢性肝炎患者で血清LG2mを測定し、約3分の1の患者で血清LG2mが健常人上限であるカットオフ値(30pg/ml)を超えていることを見出した。血清LG2mが上昇している患者は経過で高率に肝がんを発症している一方、血清LG2mが正常な患者からは一例も肝がんを発症していないことが後ろ向きのコホート解析で明らかになった。

そこで、2014~2018年までにC型肝炎ウイルス治療を受けウイルスが消失した、これまでに肝がんを発症したことがない399例の患者を登録、血清LG2mを測定し肝発がんを前向き多施設共同研究で検討。その結果、血清LG2mの上昇が認められる患者は正常な患者に比べ、経過で肝がんを発症する危険が約20倍高いことが明らかになった。

さらに、既存の肝発がん予測マーカーである血小板数や線維化マーカー、AFPなどと比較した結果、血清LG2mは最も肝発がんの危険に関わるマーカーであることが明らかになった。

今回の研究により、血中に存在する微量の特殊な基底膜成分LG2mを測定することで、「画像的に肝がんのないC型慢性肝炎治療後の患者で、将来の肝発がんの危険を血液診断する」「画像的に遠隔転移のない肝がん患者で、将来の遠隔転移の危険を血液診断する」という、がん研究における画期的な2つのブレイクスルーを将来達成することが期待される、と研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

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