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PTSDの症状が、認知症治療薬「メマンチン」で改善-NCNPほか

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2021年01月26日 AM11:15

メマンチン投与で海馬神経新生の亢進と恐怖記憶の忘却促進、マウスで確認済み

)は1月22日、)治療におけるメマンチンの有効性を明らかにしたと発表した。この研究は、NCNP精神保健研究所の金吉晴所長、行動医学研究部の堀弘明室長らの研究グループが、東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻の喜田聡教授、あいクリニック神田の西松能子理事長、鬼頭諭院長、齊藤卓弥医師、若松町こころとひふのクリニックの加茂登志子PCIT研修センター長、金沢大学国際基幹教育院臨床認知科学研究室の松井三枝教授と共同で行ったもの。研究成果は、「European Journal of Psychotraumatology」に掲載されている。


画像はリリースより

現在、PTSDの主要な治療法として、心理療法と薬物療法が行われている。心理療法については、トラウマ焦点型認知行動療法の有効性が示されており、主要な国際ガイドラインにおいて第一選択とされ、持続エクスポージャー療法が保険適用となっている。効果量が概ね1.5以上と報告されており、有効性は高いが治療者・患者双方の負担が大きく、専門家の育成も困難なため、普及が困難な状況にある。薬物療法では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬のパロキセチンとセルトラリンがPTSD治療薬として承認されているが、反応率は30~50%程度とされ、改善しない患者も多いことが問題視されている。このような現状から、PTSDに対する新規治療法の開発は非常に重要な課題となっている。

今回の研究に先立ち、共同研究者である喜田教授らのグループは、マウスの海馬において神経細胞の新生を促進すると記憶が忘却されることに着目し、記憶忘却効果によるPTSDの改善方法の開発に取り組んできた。一連の研究において、マウスにメマンチンを投与すると海馬神経新生が亢進し、恐怖記憶の忘却が促進され、PTSD治療に有効である可能性を見出している。メマンチンは、グルタミン酸受容体サブタイプの一つ、N-メチル-d-アスパラギン酸(NMDA)受容体の拮抗薬。NMDA受容体は恐怖記憶のメカニズムに関与することが明らかにされている。現在メマンチンはアルツハイマー型認知症の治療薬として承認され、症状の進行を抑制する薬として広く使用されている。

10例中6例がPTSDの診断基準を満たさない水準にまで改善

研究グループは今回、性被害、DV、虐待、災害等によるPTSD患者を対象として、メマンチンの有効性と安全性を調べる目的で、12週間のオープンラベル臨床試験を実施した。精神疾患の診断・統計マニュアル第4版(DSM-IV)に基づきPTSDと診断された13人の成人女性患者がエントリー。国立精神・神経医療研究センター病院またはあいクリニック神田の外来で、12週間にわたりメマンチンを投与した。メマンチンは、各患者がすでに服用している薬剤に追加し、最初の投与量は5mg/日とし、その後は状態に応じて適宜増量あるいは減量した。併用薬は、試験期間中、基本的に変更せず、トラウマについて話し合うカウンセリングは行わなかった。主要アウトカム指標は、PTSD診断尺度(PDS)で評価されたPTSD診断および重症度とした。

エントリーした13例のうち、必要なフォローアップデータが得られた10例について分析を実施。その結果、PDS合計得点の平均値はベースラインの32.3±9.7からエンドポイントの12.2±7.9へと減少し、対応のあるt検定によって有意差が認められ、効果量も大きかった(p=0.002、d=1.35)。侵入症状、回避症状、過覚醒症状得点のいずれも、ベースラインからエンドポイントにかけて、有意な減少が認められ、10例中6例において、エンドポイントでPTSDの診断基準を満たさない水準にまで改善していた。有害事象については、睡眠の問題、眠気、鎮静、体重変化、低血圧などが観察されたものの、重篤なものは認められなかったとしている。

承認薬であるメマンチンは一般の精神科クリニックで治療を受けやすいというメリットも

今回の研究結果から、メマンチンの服薬によってPTSD症状が有意に改善し、その効果量(治療前後)も1.35と、持続エクスポージャー療法に匹敵するほどに大きく、忍容性も概ね良好であることが示された。メマンチンはすでにアルツハイマー型認知症の治療薬として広く使用されていることからも、PTSD治療への応用が比較的容易であり、一般の精神科クリニックで治療を受けやすいというメリットがある。

「今後は、本オープンラベル臨床試験で得られた結果をもとに、PTSD治療におけるメマンチンの有効性と安全性を検証するためのランダム化比較試験を予定している。将来はPTSDが身近なクリニックで効果的に治療され、また災害時には、多くの被災者のトラウマ症状が効果的に軽減されることが期待される」と、研究グループは述べている。

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