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乳がん術後療法、S-1と内分泌療法併用で浸潤性病変の低減を確認-京大ほか

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2021年01月26日 PM12:00

ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんを対象に臨床試験実施

京都大学は1月25日、(ER)陽性HER2陰性乳がんに対し、経口フルオロピリミジンであるS-1と術後補助内分泌療法の併用が、術後補助内分泌療法単独よりも予後を延長することを検証するために実施した第3相試験の結果を発表した。これは、同大医学研究科の戸井雅和教授、医学部附属病院の髙田正泰助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Lancet Oncology」にオンライン掲載されている。

乳がんは女性で最も罹患率の高いがんであり、ER陽性HER2陰性乳がんはその約70%を占める最多のサブタイプである。検診の普及や薬物療法の進歩により乳がんの予後は全体として改善してきている。ER陽性HER2陰性乳がんは、術後に少なくとも5年間の内分泌療法を行うことが標準となっているが、術後長期にわたる再発リスクが報告されているなど、いまだ予後に改善の余地がある。そのため、内分泌療法の延長投与、化学療法の併用などがこれまで検討されてきた。S-1などの経口フルオロピリミジン(化学療法)は、転移性乳がんの疾患進行を抑制する役割を果たすことが示されている。

そこで研究グループは、ER陽性HER2陰性原発性乳がん患者を対象に、標準的な術後内分泌療法にS-1を併用することで予後に改善がみられるかを臨床試験で検討した。


画像はリリースより

S-1と内分泌療法併用で浸潤性病変の発生リスクが37%低減

日本の139施設において多施設共同ランダム化非盲検比較第3相試験を実施した。対象は、ステージ1~3Bの浸潤性乳がん(中等度~高度の再発リスク)を有する20歳~75歳の女性。5年間の標準的術後補助内分泌療法を単独で受ける患者群と、標準的術後補助内分泌療法に1年間のS-1投与を併用して受ける患者群にランダムに振り分け、治療を行った。主要評価項目は、浸潤性病変のない生存(iDFS)とした。

2012年2月1日~2016年2月1日に、1,930例が試験に組み入れられ、957例(50%)に内分泌療法とS-1を併用、973例(50%)に内分泌療法を単独で施行した。追跡調査期間の中央値は52.2か月(四分位範囲42.1~58.9)。内分泌療法単独群155例(16%)、S-1併用群101例(11%)にiDFSイベントが発生した。結果、標準的術後補助内分泌療法にS-1を併用することにより、浸潤性病変の発生リスクが37%低減された(ハザード比0.63、95%CI 0.49~0.81、p=0.0003)。中間解析において主要評価項目に対して定めた有効中止の条件に合致したため、同試験は早期終了した。

最も一般的なグレード3以上の有害事象は、好中球数減少(S-1併用群72/954例[8%];内分泌療法単独群7/970例[1%])、下痢(S-1併用群18例[2%];内分泌療法単独群0例)、白血球減少(S-1併用群15例[2%];内分泌療法単独群2例[1%])、および疲労感(S-1併用群6例[1%];内分泌療法単独群0例)であった。また、重篤な有害事象は、S-1併用群25/954例[3%]、内分泌療法単独群9/970例[1%]で報告されている。S-1併用群において、治療と関連があるかもしれない死亡が1例(肺動脈血栓症疑い、1%)認められた。

中等~高度の再発リスクを有するER陽性HER2陰性の原発乳がんの治療オプションに

以上のデータから、S-1と内分泌療法の併用は、中等度~高度の再発リスクを有するER陽性HER2陰性の原発乳がん患者における有望な治療オプションになり得ると考えられる。今後、長期にわたる観察によりS-1併用の生存率への寄与を評価することが望まれる。

「「」は日本で開発された薬剤で、今回、原発乳がんの術後補助療法における再発抑制効果と忍容性が証明された。高度医療・先進医療Bとして行われた今回の臨床試験には全国から多数の施設に参加いただいた。より多くの乳がん患者の役に立つ治療法になることを望む」と、研究グループは述べている。

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