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抗菌薬・抗生物質の研究開発、供給に関する認知調査の結果を発表-AMR臨床リファレンスセンター

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2020年12月07日 AM11:45

抗菌薬における医療の深刻な実情に気づいていない?

AMR臨床リファレンスセンターは12月4日、全国の20~60代の331人を対象に実施した、「・抗生物質の開発停滞、供給トラブルについての認知調査」の結果を発表した。


画像はリリースより

抗菌薬は細菌による感染症の治療に用いる薬だが、使用すると細菌は逃げ延びようとし、抗菌薬が効かない「」が生じる。薬剤耐性菌が増えてしまうことは、日本のみならず世界中で問題となっている。

一方で、重要な対抗策となる新たな抗菌薬の開発や供給は滞り、薬剤耐性問題の悪化を加速させている。国民皆保険制度に守られている日本では気づきにくい医療の実情であるが、抗菌薬開発の停滞という事態は確実に進んでいる。自分の健康を守るためにも医療と経済、医療とグローバル化の実情を知り、一人ひとりが危機意識を持ち、抗菌薬の開発、供給の問題を考えていく必要がある。

「新しい抗菌薬の開発が滞っていることを知っている」30%

「新しい抗菌薬・抗生物質の開発が滞っていることを知っていますか?」という質問に対し、「いいえ」と答えた人は70.1%で、多くは開発が滞っている現状を知らないことが明らかになった。薬剤耐性菌が発生しても新しい抗菌薬をつくればいいと安易に考えてしまうが、開発に莫大な資金と時間を要するため現実には難しい。

また、「抗菌薬・抗生物質の研究開発から撤退する製薬企業が増えていることを知っていますか?」という質問に対し、「はい」と答えた人はわずか20.5%であった。抗菌薬は利益が少なく投資資金の回収が難しくなっている。そのため、新薬を開発しても事業として成り立ちにくく、米国では新規抗菌薬の開発に成功したバイオベンチャーが倒産した事例すらある。

この状況に危機感を持っている国々では、研究開発そのものに対する補助金やファンド(プッシュ型インセンティブ)が立ち上がり、日本でも始まっている。一方、開発した薬剤を安定的に供給するため利益保証制度などの施策(プル型インセンティブ)の重要性が指摘されており、各国が模索している。

「供給トラブル(2019年)から混乱が生じたことを知っていた」17.5%

抗菌薬のセファゾリンナトリウム注射用(日医工株式会社)の販売が2019年に一時中止され、それを機に全国的な抗菌薬供給トラブルが生じた。この問題を知っているかを尋ねたところ、「はい」と答えたのは17.5%であった。

セファゾリンは、手術時の感染予防に多く使われている重要な薬で、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)感染症の第一選択薬として使われている。再びこのような事態に陥らないように、今後は薬剤耐性菌の問題とともに抗菌薬の供給問題にも意識を向けていくことが必要だ。

広域抗菌薬の使用が薬剤耐性菌の発生原因に

供給が不安定になると最適な抗菌薬を使えなくなる可能性が生じる。例えば、前述のセファゾリンはMSSA感染症の治療に最適の抗菌薬であるが、供給が滞るとその代わりにより広域(効く菌が多い)の抗菌薬が使われやすくなる。広域抗菌薬は、感染症に関係ない細菌が死滅したり薬剤耐性菌が生じたりする原因となる。セファゾリンの代替薬の多くは広域抗菌薬であり、抗菌薬の適正使用の流れに逆行することになった。

1920年代にフレミングがペニシリンを発見し、1940年代に実用化された。セファゾリンは日本の藤沢薬品工業が開発し1971年頃から一般的に使われるようになった。かつての日本では、多くの製薬企業が抗菌薬を開発していたが、新規抗菌薬の開発が滞っていくとともに、複数の企業が抗菌薬市場から撤退した。現在、日本では長く使われている抗菌薬が多く、ジェネリック薬の割合が高くなっている。

既存抗菌薬の安定供給の難しさとグローバル化の影響

抗菌薬の使用量は、世界的にみると2000~2015年までの期間に65%増加。開発途上国を中心に、より安価な抗菌薬が求められ、生産コストの低い国への生産移行が生じている。日本で使用されている抗菌薬も、その多くは主にコスト面の理由から原薬や製品を海外から輸入して製造している。セファゾリンの供給トラブルは、イタリアから輸入している原薬に異物が混入していたことと、出発物質を製造する中国メーカーが中国当局による環境規制の影響で、生産を止めたことがきっかけあった。抗菌薬は合成や発酵によって中間体を作成し、そして原薬、医薬品へという製造工程がある。その過程で、複数の企業と国が関わっている。

グローバル化によって安価な抗菌薬を得られる一方で、予想外のトラブルから供給が滞るリスクを抱えている。薬剤耐性対策の観点からも、安定的に供給を続けられるようビジネスモデルを整えていくことが必要で、厚生労働省もこの問題に取り組みを開始。今後の動きに注目する必要だ。

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