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マスクなどの摩擦刺激で皮膚が脆弱化する仕組みを解明、皮膚からの感染防止策に期待-東北大

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2020年08月21日 PM12:30

独自開発の非侵襲高速物質透過量計測法を採用、モデル動物で皮膚バリア機能を調査

東北大学は8月20日、皮膚表面に摩擦刺激を与えると皮膚最上層にある角質層の角化細胞に微小なひずみが生じることを発見し、力学的解析を用いて、摩擦刺激による皮膚の脆弱化のメカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院工学研究科の菊地謙次准教授、重田俊輔大学院生、石川拓司教授、医工学研究科の沼山恵子准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Pharmaceutics」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

皮膚の表面は角化細胞間を埋めるセラミドやコレステロール、脂肪酸によって、皮膚内部からの水分の蒸発を防ぐだけでなく、外部からの薬剤や細菌、ウイルスの浸透を防ぐ「皮膚バリア機能」を持っている。皮膚損傷部(擦過傷や切傷、咬傷、刺傷、靴擦れなど)では、正常皮膚より薬剤経皮吸収のコントロールが困難になり、同時に病原菌やウイルスの感染リスクが高くなる。また、見た目には傷には見えない程度であっても、摩擦刺激を受けた皮膚では皮膚のバリア機能の喪失(脆弱化)が生じることが知られていた。しかし、そのメカニズムはこれまで明らかにされていなかった。

皮膚の脆弱性を定量的に検査するためには、皮膚の表面から内部に透過する物質量の検査や血中物質濃度などの侵襲性のある検査方法が用いられてきた。

今回研究グループは、独自に開発した非侵襲高速物質透過量計測法を採用し、ヒト薬剤浸透モデル皮膚として用いられるユカタン子豚皮膚にさまざまな摩擦刺激を与え、皮膚の摩擦刺激に対する皮膚バリア機能の脆弱性について調査を行った。

摩擦刺激で生じた角化細胞のひずみが蓄積され、皮膚バリア機能の脆弱化が増加

研究では、皮膚が摩擦刺激によって変形し、また元の形に復元する性質を数理モデル化し、加えた摩擦刺激の周波数および荷重をもとに、皮膚の刺激前の形から刺激後の形の変化を示すひずみについて、力学的解析を行った。その結果、摩擦刺激が加わった皮膚では、摩擦力が増すごとにひずみが増し、角化細胞が摩擦方向に縮んで変形することがわかった。

摩擦刺激によって生じた角化細胞のひずみは時間とともに蓄積され、角質層内に微小な間隙が形成され、皮膚バリア機能低下を引き起こす。表皮細胞のアポトーシス後の角化細胞は自己修復しないことから、皮膚バリア機能は皮膚ターンオーバー(約40日)の間回復できず、時間不可逆的にひずみとして蓄積され、摩擦刺激によって皮膚バリア機能の脆弱化が時間とともに増加することが明らかになった。

摩擦刺激のコントロールが、皮膚からの感染リスク低減などにつながる可能性

今回の研究成果は、日々のウイルス感染防止としてマスク着用やスポーツなどによる皮膚への外的な摩擦刺激によって、皮膚のバリア機能が失われていく可能性を示す重要な報告である。新型コロナウイルスの主な感染経路は飛沫や接触であるためマスク着用が推奨されているが、長時間のマスク着用により脆弱化した皮膚にウイルスが付着すると、さまざまなウイルス感染のリスクが懸念される。

同研究で明らかになった仕組みにより皮膚への摩擦刺激のコントロールが可能になれば、バリア機能が失われた皮膚からのさまざまなウイルス感染を抑止する新たな感染防止策として貢献することが期待される。「皮膚への摩擦刺激をコントロールすることによって経皮吸収量を制御したり、皮膚からの病原菌やウイルスの感染リスクを低減させたりすることで新たな経皮療法の開発を考えている」と、研究グループは述べている。

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