高い効果を有する「標的放射線治療」、医療従事者などへの被ばくが問題視されていた
北里大学は6月27日、放射性医薬品による放射能汚染を迅速に可視化できる環境用ガンマ線カメラの開発に成功したと発表した。この研究は、同大大学院医療系研究科 博士課程2年の塚本ひかり氏と、医療衛生学部の村石浩教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」に掲載されている。

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近年、神経内分泌腫瘍に対する標的放射線治療(Targeted Radionuclide Therapy:TRT)として、ルテチウム-177(177Lu)を用いた放射性医薬品(177Lu-oxodotreotide)が注目されている。この治療法は高い治療効果を有する一方、放射能が診断用放射性医薬品(99mTc)の10倍以上と大きいため、医療従事者や清掃業者などへの被ばくが大きな課題となっている。
99mTc汚染環境下でも干渉を受けず、177Lu-oxodotreotideからのガンマ線を可視化
同研究は、先に研究グループが提案・実証した「回転型全方位コンプトンカメラ技術」を基に開発されたもの。今回は、177Lu(113、208keV)のような低エネルギーガンマ線を対象とするイメージングを可能とするため、Monte Carloシミュレーションによる検出器の設計から製作までを独自に遂行した。
試作機はCaF2とメタルパッケージ型光電子増倍管を組み合わせた、わずか6本のカウンターを採用することで、小型かつ高感度な全方向イメージングを可能にしている。実験では、核医学施設で一般的に用いられる99mTcによる汚染環境下でも干渉を受けず、177Lu-oxodotreotideからのガンマ線を高感度に可視化できることを実証した。
ガンマ線可視化で迅速な汚染検査が可能に、被ばくリスク低減に期待
放射性汚染物から放出されるガンマ線の可視化を通じて、迅速な汚染検査・除染確認を可能にし、医療従事者や一般公衆の被ばくリスク低減に大きく貢献することが期待される。
「特に、RI病棟(放射性同位元素(Radio Isotope)を用いた治療や検査を行う病棟)が不足する日本において、安全な放射線治療の実施と医療施設の円滑な運用を支える重要なツールとして、今後臨床現場への社会実装が期待される」と、研究グループは述べている。
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