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ローヤルゼリーに含まれる脂肪酸10H2DA、骨量減少抑制に寄与-東京医歯大ほか

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2020年07月22日 PM12:30

ローヤルゼリー摂取で骨量維持効果は得られるか

東京医科歯科大学は7月20日、ローヤルゼリーに含まれる脂肪酸である「10-ヒドロキシ-2-デセン酸(10H2DA)」が、遊離脂肪酸受容体であるFFAR4を介してNF-κBシグナルを抑え、骨量減少を抑制することをつきとめたと発表した。これは同大大学院医歯学総合研究科分子情報伝達学分野の中島友紀教授、林幹人助教および同大学院歯周病学分野の岩田隆紀教授、土谷洋輔大学院生らの研究グループと、、森川健康堂株式会社との共同研究によるもの。研究成果は「Journal of Biological Chemistry」に掲載されている。


画像はリリースより

一見、変化がないように見える骨だが、常に新しく生まれ変わっており、古い骨を破骨細胞が破壊し、骨芽細胞が新しい骨で充填することで、その恒常性を保っている。この再構築は「骨リモデリング」と呼ばれ、このバランスの破綻が骨粗しょう症のような骨疾患を誘導し、骨の健康を損なうことにつながる。

ローヤルゼリー(Royal Jelly;RJ)は、ミツバチの働きバチが蜂蜜や花粉を食べ、その体内で合成し、咽頭腺、大腮腺から分泌される乳白色のクリーム状の物質。女王バチやその幼虫に必須な特別食物で、タンパク質が多いほか、アミノ酸、脂質、ビタミン、ミネラルなどが多彩な成分で構成されている。古来よりヒトにおけるRJの摂取は、抗炎症、血圧改善、肥満予防などさまざまな健康増進の効果をもたらすことが知られており、RJに特徴的な機能性分子が含まれていると考えられてきた。これまでに、RJの摂取が骨量の維持に有意な効果をもたらすことが示唆されていたが、その機能性分子や作用メカニズムについては不明だった。

骨粗しょう症のモデルマウスにRJ投与で、骨量減少抑制

研究グループは、運動機能の低下や介護の病因となる閉経後骨粗しょう症のモデル実験として、卵巣を摘出したマウスに対しRJを経口で投与し、骨量をマイクロCTで観察した。卵巣を摘出したマウスは、エストロゲンが欠乏し重篤な骨粗しょう症を発症する。結果、RJを服用しているマウスで、この骨量減少が有意に抑制されることが見出された。

RJの骨量減少の抑制効果を明らかにするため、骨の構成細胞の状態を骨形態計測法で解析したところ、破骨細胞の分化や機能の亢進を抑制することが見出された。一方、骨芽細胞や骨形成に変化はみられなかった。この結果から、エストロゲン欠乏による破骨細胞の分化や機能の亢進に対して、RJが抑制的に作用することで骨量減少を改善する可能性が生体レベルで示唆された。

脂肪酸10H2DAが、破骨細胞分化と骨破壊に抑制的に作用

次に、RJによる細胞レベルでの効果を検討するため、破骨細胞の分化誘導系にRJを作用させたところ、濃度依存的に破骨細胞の分化を抑制することが見出された。この結果からRJ構成成分に破骨細胞に対して抑制的に働く機能性分子の存在が確実視された。

RJ構成成分の骨破壊抑制性の機能性分子を同定するため、シリカゲルクロマトグラフィーやLC-MS/MSなどを駆使し、RJの成分分画化と破骨細胞の分化誘導および骨破壊能の実験系を試みたところ、脂肪酸10H2DAが、破骨細胞分化と骨破壊に抑制的に作用することが判明した。閉経後骨粗しょう症マウスで10H2DAを服用させたところ、RJの服用と同様、破骨細胞の異常な活性化が抑制されることが確認された。

10H2DAが遊離脂肪酸受容体FFAR4を活性化し、NF-κBのシグナル伝達を抑制

10H2DAによる骨破壊の抑制メカニズムを明らかにするため、破骨細胞における遺伝子発現プロファイリングを行ったところ、遊離脂肪酸の受容体であるFFAR4の特異的な発現を見出した。そして、リガンド/受容体結合解析とFFAR4受容体のノックダウン解析から、10H2DAがFFAR4を活性化することを確認。さらに、10H2DAはFFAR4受容体の下流でNF-Bのシグナル伝達を抑制することにより、破骨細胞分化を抑制することが明らかになった。

今回の研究成果は、高齢化社会において大きな問題になっている骨粗しょう症など病的な骨破壊を伴う骨疾患の新たな治療法の開発へとつながることが期待される。「RJはすでに安全性も確立されサプリメントなど機能性食品として世界中で服用されており、今後は科学的なエビデンスベイスドな食品として、骨健康の維持や増進へ汎用されることが期待される」と、研究グループは述べている。

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