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骨折の危険性の高い骨粗鬆症に対する抗体医薬イベニティ発売-アステラス・アムジェンら

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2019年03月22日 AM09:30

脆弱性骨折から要介護・要支援、介護者の負担も大きく

アステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社とアステラス製薬株式会社およびユーシービージャパン株式会社は3月4日、骨折の危険性の高い骨粗鬆症を効能又は効果としてイベニティ(一般名:(遺伝子組換え))を世界に先駆けて日本で発売した。同剤の発売に伴い、アステラス・アムジェンは3月14日、「骨粗鬆症治療における課題と治療成績向上に向けて」と題してメディアセミナーを開催。徳島大学藤井節郎記念医科学センター顧問の松本俊夫氏と宮内内科クリニック理事長の宮内章光氏が講演した。


徳島大学藤井節郎記念医科学センター顧問
松本俊夫氏

骨粗鬆症による脆弱性骨折は、要介護・要支援の原因ともなり、介助・介護者の負担も大きくなることから、超高齢社会を迎えた日本では喫緊の課題だ。骨粗鬆症治療は健康寿命の延伸や日常生活の質(QOL)の維持、生命予後の改善を目的に行われるが、「治療目標を達成できる患者は限定的で、部位によっては骨強度の改善が十分になされない、骨折後2年以内の再骨折リスクを低減させることが難しいなどの課題がある」(松本氏)。このため、強力な骨密度増加効果を有する更なる治療選択肢が求められてきた。

脆弱性骨折から介護が必要になった50歳以上の患者を介助・介護している男女3,071名を対象に、アステラス・アムジェンが実施したアンケート調査の結果では、患者の介助・介護のために、約4人に1人が離職(退職、休職)や転職などを経験しており、離職した介護者のうち再就職や復職を果たしたのは約5人に1人。離職中の介護者の約半数が社会復帰を希望しているものの、約8割が再度働くことは難しいと回答していた。患者の介護レベルの高さと介護者の離職には相関関係があることが示唆されており、労働人口の減少が深刻化する日本において、介護者の負担軽減の点からも、骨粗鬆症治療で骨折を予防する社会的意義は大きい。

骨形成促進と骨吸収抑制の両面で作用、治療パラダイムの転換に期待

イベニティは、骨形成促進作用と骨吸収抑制作用を有するヒト化抗スクレロスチンモノクローナル抗体製剤だ。適応は、「骨折の危険性の高い骨粗鬆症」で、1か月に1回、12か月に渡って投与する。海外で行われた国際多施設共同の2つの第3相試験では、投与後6か月で顕著な骨密度増が認められ、12か月投与で新規椎体骨折、非椎体骨折、大腿骨近位部骨折の発生率低下が示されている。


宮内内科クリニック理事長
宮内章光氏

同剤の特徴である強力な骨密度増加効果により、従来のように骨粗鬆症発症後、骨吸収を抑制して骨量や微細構造の損失を遅らせる治療を行った後に骨形成促進治療を行う流れから、まず短期間で骨形成を促進し、骨量を最大化、微細構造を保持したうえで、骨吸収を抑制し、骨量・微細構造を維持する治療へと、治療のパラダイムシフトも期待できるという。松本氏は、「強力な骨密度増加と骨折防止効果を示すことから多くの患者で治療目標の達成ができ、骨吸収の抑制によって骨の構造的な劣化などを来さず骨量増加が可能で、骨折後1~2年間の再骨折の危険性が最も高い時期から強力な骨量増加作用で骨強度を改善できる」と期待をのぞかせた。

同剤は、12か月の投与終了後は別の骨粗鬆症治療薬への切り替えが必要となる。宮内氏は今後の骨粗鬆症治療における薬剤の使い分けについて、あくまでも私見と断ったうえで「骨折リスクが高く、多発骨折などを起こしている極めて骨密度が低い患者に対しては、まずはイベニティで骨量を増やし、その後は抗RANKL抗体製剤や経口・注射のビスホスホネート製剤に移行するという治療方針が推奨されるのではないか」との見解を示した。

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