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がん細胞由来エクソソームの超高感度検出法を開発-神戸大

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2019年01月29日 PM01:30

新たなBMとして期待されるがん細胞由来のエクソソーム

神戸大学は1月25日、がんの新たなバイオマーカーとして注目されているエクソソームの超高感度検出法を開発したと発表した。この開発は、同大大学院工学研究科の竹内俊文教授、同医学部附属病院の佐々木良平教授、システム・インスツルメンツ株式会社の濱田和幸氏らの研究グループと、同大大学院工学研究科医療デバイス創製医工学研究センターの教員が中心になり行ったもの。研究成果は、独化学会国際誌「Angewandte Chemie International Edition」電子版に掲載されている。


画像はリリースより

細胞外小胞エクソソームは、さまざまな細胞から放出される脂質二重膜を有する100ナノメートル程度の小胞。最近、がん細胞から放出されるエクソソームが、がんの悪性化や転移に深く関わっていることが明らかとなり、このがん細胞由来エクソソームを追跡することで、がんの早期発見を実現する試みが、組織生検やマンモグラフィー検査や血中がんマーカータンパク質検査など各種がん診断法に代わる新たながんの検査法として注目されている。

しかし、現状のエクソソーム分析法は、超遠心やアフィニティー分離などを併用して行われるため、手順が煩雑で、簡便で迅速とは言えない。煩雑な前処理をすることなく、体液中のがん細胞由来のエクソソームと正常エクソソームとを識別することができれば、簡単な体液検査でがんの早期発見が可能となる。

煩雑な前処理不要、超高感度なエクソソーム検出が可能に

研究グループは、鋳型重合法のひとつである分子インプリンティング技術を応用し、エクソソームを固定化したガラスチップ上に30ナノメートル程度の人工高分子薄膜を形成後、エクソソームを取り除くことにより、エクソソームのサイズに近い空間(エクソソーム補足空間)をガラス基板上に形成。さらに、開発したポストインプリンティング修飾技術を用い、そのエクソソーム補足空間内のみに、エクソソーム表面の膜タンパク質を認識する抗体と、エクソソームの結合情報を蛍光変化で読み出すことのできる蛍光分子を選択的に導入し、エクソソームセンシングチップを得た。このセンシングチップは、エクソソーム上の膜タンパク質を認識してエクソソームを捕捉し、その捕捉情報を蛍光変化で読み出す、抗体と人工材料を融合したエクソソームの高感度蛍光検出チップだという。

さらに、この蛍光センシングチップによるエクソソームの測定を簡便に実行するため、すべての分析作業を自動化したエクソソーム自動分析計の製作をシステム・インスツルメンツと共同で実施。この分析計は、3Dロボットアームを搭載した自動分注装置に高感度CMOSカメラ搭載蛍光顕微鏡ユニットを装着したもので、エクソソームセンシングチップを挿入した特注の扁平型ピペットチップを用いて、試料の吸引・吐出・基板の洗浄を自動的に行う。これにより、前処理なしかつ10分以内で、1ミリリットルあたり6ピコグラムという従来にはない高い検出限界を達成。これは、10マイクロリットル中に約150個のエクソソームがあれば検出可能ということであり、従来報告されている測定法の感度を大幅に上回る超高感度なエクソソーム検出が可能となったとしている。

今後、大規模に臨床試料を収集してエクソソーム分析を行い、がん由来エクソソームの分析が、がん診断に有用であることが実証されれば、その簡便性からがん検診受診率の向上に貢献することや、がん診断、治療効果、がんの転移予測、治療後の予後管理などにも適用可能であるという。研究グループは、国民の健康に大きく貢献することが期待される、と述べている。

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