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尿検体を用いたがん検査、体外診断分野では初となる実証実験を開始-日立

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2018年04月19日 AM11:15

2018年4月より半年間を予定

株式会社日立製作所は4月16日、尿検体を用いたがん検査の実用化に向けた、体外診断分野では初となる実証試験を2018年4月より開始すると発表した。期間は、2018年9月までの半年間を予定している。

現在、日本における、検査・治療費用の直接費用を含むがんの疾病費用は、間接費を含めると約10兆円にのぼる。厚生労働省は2017年度に閣議決定された「第3期がん対策推進基本計画」に基づき、がんの早期発見・早期治療につながるがん検査の受診率向上を推進している。そのため、従来の診断法の高精度化だけでなく、がんを早期に発見できる簡便かつ高精度の新しい検査法が求められている。

日立は、尿中代謝物を用いたがん検査の研究を2015年から開始。2016年6月には尿検体による健常者とがん患者の識別に成功していた。しかし、実用化に向けては、健常者の代謝物と比較した際に、わずかに存在量が増減するがん関連のバイオマーカー候補を効率的に抽出する方法の確立が課題となっていた。

検体採取時間などの情報を実証試験用ITシステムで同時管理

そこで、尿中代謝物からバイオマーカー候補を効率的に抽出できる新しいがん検査モデルを開発。実証試験のスキームを構築したという。今回の実証試験では、臨床情報(がんの有無)付き尿検体の回収から検体搬送時の温度のトレースや時間の管理、液体クロマトグラフ/質量分析計(LC/MS)によるバイオマーカーの定量分析、がん検査モデルの構築とそれに基づくがんのリスク判別、臨床情報と判別結果との妥当性検討など、一連の解析フローを半年間繰り返し実施する。LC/MSによる定量分析はシミックファーマサイエンス株式会社が、解析データの評価は名古屋大学医学部附属病院の協力を得て実施する予定。


画像はリリースより

採取した尿は代謝物の定量解析を行うために、東京都国分寺市にある日立の総合解析センタから兵庫県西脇市のシミックファーマサイエンス西脇ラボに、マイナス温度、2~8℃、35~37℃などいくつかの温度帯で送付される。また今回、解析に必要な各種管理を適切に行うため、実証試験用ITシステムを開発したという。これは、搬送する際の温度管理を行うことができるだけでなく、尿検体の採取時間、採取場所、容器状態も同時に管理するITシステムであり、将来の尿検体搬送の際に、検体の漏れ、採取時間、採取場所、搬送温度、搬送時間などの管理が必要になるとの考えに基づくもの。同システムにより、採取時にスマートフォンで撮影した位置情報付きの検体画像との連携や、GPSと温度情報を送信する機能を備えた搬送ボックスによる搬送温度のトレーシングを行えるという。

日立は、今回の実証試験を通して、種々のデータを取得して技術課題を洗い出し、尿中代謝物によるがん検査の実用化に向けた研究を加速するとしている。

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