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RET融合遺伝子陽性肺がんで新たな薬剤耐性機構を発見-国がん

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2018年02月16日 PM01:15

バンデタニブの治療効果が報告されているRET遺伝子融合

国立がん研究センターは2月14日、「バンデタニブ」によって治療されたRET融合遺伝子陽性の肺がん患者のがん試料の機能ゲノム解析を行い、新しい薬剤耐性メカニズムを発見したと発表した。この研究は、同研究所ゲノム生物学研究分野の中奥敬史研究員、河野隆志分野長、東病院呼吸器内科の後藤功一科長らは、京都大学、東京大学、、英クリック研究所と共同で行ったもの。研究成果は「Nature Communications」に掲載されている。

現在の肺がん治療は、遺伝子異常にもとづく分子標的治療が有力な治療手段のひとつとなっているが、がん細胞が獲得する分子標的治療薬への耐性の獲得が、治療効果の大きな障壁になる。この薬剤耐性としては、EGFR遺伝子変異肺がんにおける二次変異(T790M変異)など、薬剤や酵素の基質であるアデノシン3リン酸の結合部位に生じる変異が主な原因として知られている。

RET遺伝子融合は、2012年に同センター河野隆志分野長らが新しい肺がん治療標的分子として発見。全国遺伝子診断ネットワーク「LC-SCRUM-Japan」に基づいて同定された陽性例を対象とした医師主導治験(LURET試験)により、バンデタニブの治療効果が報告されている。

遠隔的に3次元構造を変化させる二次変異が

今回の研究では、バンデタニブ治療に耐性となる前と後の患者の肺がんのゲノムDNAについて、次世代シークエンサーを用いた遺伝子パネル検査(NCCオンコパネル検査)を実施。RET融合タンパク質の薬剤の結合部位から離れた位置に存在する活性化ループ上に耐性化をもたらす二次変異を発見した。


画像はリリースより

また、X線構造解析、スーパーコンピュータ「京」などを用いた分子動力学シミュレーションなど、複合的な解析を行ったところ、この変異は、遠隔的にRETタンパク質の薬剤や基質であるアデノシン3リン酸の結合部位となる領域の3次元構造を変化させる効果を持つことが示された。このアロステリック効果により、変異タンパク質では、酵素活性の上昇と薬剤結合の低下が生じ、薬剤に耐性となると考えられるという。

がん細胞のゲノムには、多くの遺伝子変異が生じていることが明らかになっている。しかし、それらの多くは、がん化や治療に関する意義がわからない意義不明変異(VUS)である。研究グループは、「今回の研究に用いた手法は、これら意義不明変異を解明し、治療の方針決定の手助けになると期待される」と述べている。

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