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筑波大 マクロファージ内のたんぱく質・MafBが動脈硬化を促進させることを発見

読了時間:約 1分35秒
2014年01月29日 PM05:38

新たな動脈硬化治療法開発へ期待

筑波大学医学医療系、生命領域学際研究センターおよび国際統合睡眠医科学研究機構の濱田理人助教、中村恵弥博士、高橋智教授らは1月20日、遺伝子発現を調節するたんぱく質「MafB」が、白血球の一種であるマクロファージのアポトーシスを阻害することで、動脈硬化を促進させることを発見したと発表した。

(画像はプレスリリースより)

酸化コレステロールからのシグナルを、MafBが伝達

免疫細胞であるマクロファージは、細菌など有害なものに対して防御的に働いたり、老廃物を取り除いたりして、体をきれいな状態に保っているが、動脈硬化症においてはこの機能がむしろ病態に悪く働くという。近年の解析により、動脈硬化初期病変の進行には、マクロファージのアポトーシスが関与していることがわかってきていた。また、遺伝子の転写因子であるMafBがマクロファージ内で発現していることは知られており、多くの研究グループがこの機能解析を行ってきたが、具体的な機能は明らかになっていなかった。

同研究グループは、今回の研究に先立ち、MafBを産生できないマウスを2006年に作製していた。今回、さらに移植実験により血液細胞のみMafBを欠損した動脈硬化モデルマウスを作製し、動脈硬化の病態変化を検討したという。

その結果、MafB欠損マウスでは動脈硬化病変部の面積が減少し、また病変部ではアポトーシスが増加し、アポトーシス抑制たんぱくAIMの発現が著しく減少していることが明らかになった。

また、MafBがどのようなシグナルを受けてAIMを制御しているのかについて検討したところ、酸化コレステロールによって活性化された核内受容体型転写因子LXRが、MafBを制御していることが明らかになった。このことにより酸化コレステロールからのシグナルをMafBが伝達し、マクロファージ内のアポトーシス阻害を行うことで動脈硬化が進行することが明らかになったという。

プレスリリースでは、

MafBがAIM遺伝子の発現を調節する機構は今のところ動脈硬化病変部でのみ観察されていることから、このメカニズムをターゲットにした新しい動脈硬化治療法の開発が期待されます。(筑波大学 プレスリリースより引用)

と述べられている。(小林 周)

▼外部リンク

筑波大学 プレスリリース
http://www.tsukuba.ac.jp/wp-content/uploads/

MafB promotes atherosclerosis by inhibiting foam-cell apoptosis
http://www.nature.com/ncomms/2014/140120/

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