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北海道大学らの研究グループ 生きた細胞内でRNA検出を可能にする分子プローブを開発

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2013年09月13日 PM11:39

北大・理研・JST、画期的なプローブを開発

北海道大学と理化学研究所などの研究グループは、遺伝情報発現を生きた細胞内で検出する画期的な分子プローブを開発した、と9月6日発表した。

(画像はプレスリリースより)

JST(科学技術振興機構)課題達成型基礎研究の一環として、北大大学院薬学研究院 阿部洋准教授(前・理化学研究所専任研究員)らが開発、近日中に米化学会誌「Journal of the American Chemical Society」オンライン速報版に公開されるという。

リアルタイムPCRに変わる遺伝子発現検出

細胞内の遺伝子の発現は、病態の細胞レベルでの把握や薬剤の分子ターゲットの探索など、現代の医科学領域の研究において必須の解析事項である。現在、遺伝子の発現量は、一般的にリアルタイムPCR法により、破砕した細胞から抽出したRNAをDNAに変換し、増幅させて検出している。したがって、時間とコストがかかることもあるが、何よりもサンプル(細胞内のRNA)の抽出が、本当に細胞内の発現を反映しているかを左右するため、より生きたままに近い状態での遺伝子発現を可能にしたいと考える研究者は多い。

酵素による増幅不要、細胞と混ぜるだけ

今回の研究成果は、酵素を用いずに、一定温度で、生きた細胞内で化学増幅して遺伝子発現の有無を検出できるという、画期的な分子プローブの開発にある。従来の方法とは異なり、細胞と混ぜるだけで解析でき、コスト・時間・スペースを節約できるため、環境細菌検査や医療診断等の現場での活用が期待できるという。

開発されたプローブは、化学反応速度の速い芳香族系求核置換反応を利用。プローブは蛍光を化学的にコントロールした2種類が1組になっており、このプローブの先に任意の配列の標的遺伝子相補的なDNA鎖(あるいはRNA鎖)を結合させることができる。標的RNAにプローブDNAが結合すると、プローブ間の距離が近くなり、芳香族求核置換反応が起こり、蛍光を発するという。

検出後も培養継続可能

研究では、生きた大腸菌内のRNAを検出、相補的DNAではないプローブ分子では発光は認められず、細胞内に含まれるRNAと相補的な配列プローブにのみ、明らかな発光が検出された。検出後の大腸菌は、その後、培養用培地で生育することも確認している。

高額な装置を必要とするリアルタイムPCRに代わり、誰にでも簡便に生きた細胞内のRNAを高感度に検出できるこのプローブは、脳細胞や幹細胞などの分野をはじめ、幅広い領域での利用が想定されるとしている。現在では青色しかないが、今後同時に複数の標的が検出できるように、他の蛍光色の開発が求められるだろう。早期の実用化と、多くの分野への応用が期待される。(長澤 直)

▼外部リンク

北海道大学 プレスリリース
http://www.hokudai.ac.jp/

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