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大動脈プラークの日常的な破綻を血管内視鏡で確認、微小結晶状物質の放出も

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2018年07月03日 AM10:30

冠動脈疾患を有するか、疑われる患者324例を対象に

これまでカテーテル操作などによる医原性で破綻すると考えられてきた大動脈プラークが、日常的に破綻を起こし、微小結晶状物質を放出していることが血管内視鏡での観察から確認された。大阪暁明館病院心臓血管病センター長の小松誠氏らのグループがこのことを明らかにし、その研究結果が米心臓病学会誌(Journal of the American College of Cardiology:JACC)の6月26日号に掲載された。

これまでさまざまな疾患の病理標本では、脂溶性物質が存在していたと思われる孔(ゴースト像)が確認されている。今回確認されたプラークの自然破綻とそれに伴い放出された微小結晶状物質は、このゴースト像の部分に蓄積していた可能性もあり、各種疾患での新たな発症概念につながるとも指摘されている。

発表された研究の対象となったのは冠動脈疾患を有するか、疑われる患者324例。これら患者で血流維持型血管内視鏡を使用して大動脈内部の観察を行った。破綻したプラーク(パフ・シャンデリアタイプ)を確認した場合は血管内に遊離した断片サンプルを採取し、偏光顕微鏡を用いて微小結晶状物質の大きさを測定し、ゴースト像の大きさと比較した。

微小結晶状物質が毛細血管の塞栓子となっている可能性

その結果、対象患者の80.9%に当たる262例で大動脈プラークの自然破綻を確認。うち120例では、破綻したプラークが横隔膜より下位の腹部大動脈周辺で見つかり、96例で断片サンプルの採取が可能だった。プラーク破綻により採取されたサンプルはアテローム性物質が49.1%、フィブリンが50.6%、マクロファージが23.0%、石灰化が26.3%。採取できたプラーク断片の大きさの中間値は、254μm×148μmだった。

一方、アテローム性物質に含まれるコレステロール結晶は、数層から数十層に折り重なって血中に遊離・飛散する「重層タイプ」と1枚単位で遊離・飛散する「単層タイプ」があることがわかった。単層コレステロール結晶の大きさは、40μm×30μm。これに対しアテローム性物質に含まれる単層タイプと、重層タイプのコレステロール結晶をさまざまな方向から断面として切った結果と思われる病理標本のゴースト像サイズは86μm×13μm。ゴースト像に当たる脂溶性物質がプラークの自然破綻により発生した微小結晶状物質である可能性が示唆された。

小松氏らは、この大動脈プラークの自然破綻で発生した微小結晶状物質が静脈血では確認されないことから、「末梢の全身臓器中の毛細血管の塞栓子となっている可能性があり、一部原因不明とされてきた認知症やサルコペニア、慢性腎臓病などでの虚血性細胞死の起因物質となっている可能性がある」との仮説を提唱している。

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